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[コメント] 半世界(2019/日)

この映画、製炭を題材にした時点で、完全な勝利と思った。映画的な画面造型が横溢する。炭焼き窯と炎のカットも美しいが、山から、樫材(ウバメガシ)を伐り出し、ロープで運ぶアナログな画面も、とても映画的なのだ。
ゑぎ

 さて、全編でズーミングが3回。1回目は、稲垣吾郎が炭焼き窯の前で、うたた寝をして夢をみるシーン。ゆっくりと、稲垣に寄って行く。ドリーっぽく見せるが、これを、ドリーと見紛うことは有り得ないだろう(夜の浜の堤防で、稲垣、長谷川博己渋川清彦の三人が布団にくるまって会話するカットはドリーだろう)。このズーミングはお手本のようだと思ったし、実は、全編でこゝだけなら、いいのにな、と思いながら見ていた。ところが、終盤になって2回目、3回目は連打である。同じ、製炭所での「おバカ」のお弁当を食べ終わった部分なのだ。横臥する稲垣を俯瞰で寄るカットと、地面すれすれに寄るカット。この後、1回目の夢と同じような、しかし、赤い光(炭焼きの火の粉のような)が舞う幻想的なカットが続く。このズーミングの使い方には唸ってしまったのだ。

 もうひとつ、黒い大きな蝙蝠傘の画面もいい。日照り雨と蝙蝠傘。人々が全員同じような黒い傘をさしているという、この非現実な画面が映画だ。

 ただし、ラスト近くの留守電のメッセージや、ラストのクレジット・バックで演じられる光景は、私の感覚では余計。詰め込み過ぎ、欲張り過ぎな感じがする。あと、方言を使わないのなら、舞台の地名は隠蔽し、どこかの山間部、どこかの漁港というかたちの見せ方がいいのではないだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ナム太郎[*]

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