[コメント] 薄氷の殺人(2014/中国=香港)
ファーストカットは土砂?袋?シート?と思っていると、ダンプの荷台上と分かる。石炭か。ベルトコンベヤーの上に切断された手。これが事件の発端。続いてトランプする男女。男はリャオ・ファン。濡れ場があり、駅のホームでの別れの場面となる。
説明的演出はないので、リャオ・ファンが刑事だとは思えない。そして、グイ・ルンメイの登場に関しては、最初はショートパンツの脚。クリーニング屋で泣いおり、顔を隠している。あるいは、捜査中の自動車の後景で街路樹の植え込みに何かを埋めていて、顔が判然としない。店での後ろ姿から振り返って顔が見えるのは、映画が始まって25分ぐらいしてからだ。
リャオ・ファンは、道路のトンネルの抜けたところでバイクを盗まれる、というか、原付に交換される。以降この原付が、その音と共に、しばしば彼の存在の象徴となる。リャオ・ファンは警察を辞め、工場の保安課に勤めているのだが、警察の友人に頼まれて、クリーニング屋の女、ルンメイの身辺を捜査する。工場の防災訓練での消化器の噴射と、クリーニング屋のアイロンの蒸気が、マッチカットで繋がれる、といった才気ばしったカッティングが目に留まる。また、ルンメイが謎の女として実に魅力的に演出されているのだ。そして酷寒の感覚もよく定着しており、この画面の充実はポイントを高くする。
原題の「白日焔火」は本作中盤で登場するナイトクラブの名前だが、その外観のカット、屋根のネオン看板が見事な造型で特筆すべきだろう。ラストの、ビルの屋上から花火を撃ち込む場面も、原題の体現なのだろうが、一種のジョークというかハッタリというか、この趣向も面白い。
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