[コメント] 四十九日のレシピ(2013/日)
作を重ねるごとにより素直になっていくタナダユキに驚く。いい涙を流させてもらった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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乙美への回想の視点が娘であり夫でありという、いわゆる家族に絞られ、イモという狂言回しや伯母、あるいは近所の人たちなどの言葉により、家族の知り得なかった彼女の「もうひとつの顔」が見えてくるという構成がよい。これらにより画面に彼女が出ておらずとも、その存在感は圧倒的である。であるがゆえに、年表の大団円が効いてくるのだ。
役者もよい。近年ノリにノッている永作博美や石橋蓮司、そしてさすがの淡路恵子は言わずもがな、決して楽ではないイモ役を軽々と演じて見せた二階堂ふみは特に素晴らしかったと思うし、中央では無名といってよい荻野友里、中野英樹の夫婦役の爽やかさ。これら絶妙に機能するベテランと新鋭のバランスが本当によかった。
復縁を願う原田泰造に吐かせる「一緒に考えてくれないか」との実直な台詞で映画内でのコトを収める手腕も個人的には納得。これが男性監督ならああはいかなかったのではないか。男性、女性という区別は好きではないが、その辺りはタナダユキの女性ならではの繊細さと大胆さが絶妙に発揮されたところであったようにも思う。
それにしてもこのタナダユキという人は、1作ごとにより新鮮になっていくのだから驚く。いや、作家としてより素直になっていくとでも言うべきか。
決して巨匠などと呼ばれるような人にはならないと思うが、私にとっては早く次の作品が観たいと思う監督の1人であり、もちろんそれは最大級の賛辞でもある。
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