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[コメント] アウトロー(2012/米)

これは「新鮮な古さ」と言ったら良いか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作の問題点は日本でのトレーラーの出来の悪さ。あれでは単なる派手なだけのアクション作か、ピカレスクロマン作品にしか思えない。正直、「また『コラテラル』(2004)の焼き直しか。無理することないのに。ピカレスクだったらせめて『狼よさらば』(1974)のリメイク位になれば良いんだけど」とか思いながらも観に行った訳だが、良い意味で不意打ちを食らった感じ。

 まず最初のシーンから魅させてくれる。たっぷり時間使い、時間軸をずらして2つのシークェンスをザッピング。割と古い80年代位の映画にはこういうシーンが多かったものだが、今になってこれ観ると、とても新鮮な思いになる。しかもそれで描かれてるのが細やかな銃の描写。軽い武器マニアの気がある私には、これはたまらん楽しさ。

 その後の狙撃者の登場と、無差別(と思われる)惨殺シーンの描写がねちっこく描かれていくのもよろしい。冒頭からの程よい緊張感が継続していく。このあたりで少し居住まいを正した。

 ここから話は日常パートへと移るのだが、ここで一息。「ここから殺し屋の主人公が登場して、被告人の依頼に従って悪人を惨殺していくんだろうな」とか思ってた。

 …の、だが、あまりにあっさりと主人公が登場し、普通に警察や弁護士と対話してる。その会話内容も、裏を感じられず。あくまで普通の男だ。

 あれれ?思ってたのと大分違ってる?と、ここで更に注目し始めた。

 ここからの展開は、はっきり言えば“古い”。地道な捜査方法とか、真実を隠蔽したい組織がチンピラを雇って襲わせるとか、ライバルキャラの存在とか、カーアクションをちゃんと取り入れてるとか、果ては多数の敵を相手に老人をパートナーに大立ち回りと言う展開(しかも舞台は採石場!)。まあ、70年代臭がぷんぷんと…だが、それが良い。この時代にこんな演出されたら、ニヤニヤするじゃないか。しかもかなり演出が洗練されているので、この古さが逆に新鮮に感じる。

 最後の最後までこの古さと新しさの入り混じった、どこか懐かしく、そして新鮮な思いをたっぷりと味あわせてもらった。昔劇場で『リーサル・ウェポン』(1987)一作目観た時に、「これが新しいアクションのはじまりか!」と思えた時のことなどを思い出させてくれた。

 これは是非シリーズ化すべき。ただし、あんまり金かけないで、派手にはしない方向で進んでくれることを期待したい。

 最後に、一つだけ文句言わせてもらうと、終わりの投げ出し方まで70年代にしたのだけは感心しない。証言すべき人間を全部殺しっちまっては解決したことにならないじゃないか。しかもあれだけ派手にぶっ殺しておいて、証人もたっぷり。それで何事もなかったように街を去るって、流石に無理あるだろうに。ここをもう少し細やかに演出してくれたら点数上げたんだが…最後まで丁寧に作ってくれていればなあ。そこが惜しい。

(評価:★3)

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