[コメント] 台北の朝、僕は恋をする(2009/台湾=米)
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ちょっと記憶が定かでないけれども、この映画に雨が降っていたシーンはあっただろうか。おそらくなかったのではないかと思うのだが、町の路面は常に水たまりを湛えている。雨上がりの情景だ。記憶に新しいところでは『幸せの始まりは』がそうであったように、雨が降っていようがいまいが「夜」の路面はいつも濡れていなければならない――という云い方は少々原理主義に傾きすぎているかもしれないけれども、しかしそれが街灯や月光を反射して画面を豊かにするというのは黒白時代から一貫した映画のマナーだ。加えて書店シーンにおけるように、本の背表紙の色で画面をカラフルにデザインする感覚も可愛く、幸せで、そして品を保っている。
中盤の公園で強引に展開されるダンス、ラストの書店ダンス(その直前は書架を挟んで徐々に変化する表情を捉えた横ドリーの切り返しだ!)、ダンスシーンに執着を持っている観客としてはこの幸福感に涙しないでいることはできない。この強引ぶりこそがよいのだ。アーヴィン・チェンという演出家もやはりダンスシーンに執着を持っているらしい。
役者について云えば、ヒロインのスージーを演じたアンバー・クォの初々しい魅力がまず堪らないが、コンビニ娘タオツーのヴェラ・ヤンも捨てがたい。そっけなさを装ってみせる態度が素敵だ。しかし意地の悪い云い方をすれば、彼女たちは替えが利く存在だったかもしれない。どうしても彼女たちでなければならないというほどではなかったかもしれない。その点、主演の男の子は「この俳優でなければ映画は成功しなかっただろう」とまで思わせるものがある。映画の可愛らしさに最も貢献しているのは、ややもするとこのジャック・ヤオだ。
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