[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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東京フィルメックスの上映会では度々爆笑に包まれた本作。生ぬるいテレビドラマのボーナストラックには欠片も見えない作り手たちの情熱と創作意欲が下手に触ったら火傷するぐらいの熱さで異常なほどに詰まっている作品である。
事件の下敷きになっているのは埼玉県で起こった愛犬家連続殺人。殺人の被害者を細かく切り刻み、骨を焼き、完全に「消滅」させてしまう残忍極まる事件。Wiki等にもまとめられているのでご覧いただくと良いが、その映像化は本来、正視に耐えないもののはずである。
これが爆笑に繋がるのはどういうわけなのか、普通は理解できないだろうが、それを紐解く鍵は園子温監督の妥協・容赦ない演出と、ユーモラスでかなりの「人たらし」な側面を持つ殺人鬼である村田というキャラクターを具現化したでんでんの存在感である。
例えば村田が社本の娘、妻を自分の支配下に置き、外堀・内堀を完全に埋めた上で殺害の片棒を担がせる一連のシーケンスたるや、村田とその妻、愛子(黒沢あすか)の豹変ぶりを含めてぞくぞくする映画的素晴らしさに満ちている。村田に事業を持ちかけられた吉田(諏訪太郎)が殺害されて以降、この「ぞくぞく感」が映画全体を支配するのである。これほど魅力的な映画体験が他のどこで味わえるというのか。
僕は本作の成功が、これからの邦画の方向性をより「正しい」方向に導くと信じて疑わない。この強烈な映画体験をひとりでも多くの方が経ていただける事を願ってやまない者として、謹んで5の評価をつけさせていただく。
黙って観やがれ!!
(2010.11.27 有楽町朝日ホール@東京フィルメックス)
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