なぜかってだってバンド映画のくせにボーカルが歌わないから。

『BECK』という漫画があることは知っていたけどまだ読んでいない。最近はバンドブームだから、『NANA』しかり、こういう漫画が人気があるのはなんとなくわかるけど、私には「音楽」というものを「絵と文字」で説得力をもたせる原理が、実はあんまり理解できていない。でも不思議なことに漫画はそれを読者に伝える力があるようだ。不思議な現象だなあ。 でもだからこそ、この映画はこんな形でこの心臓部分を避けてはいけなかったんじゃないのか。佐藤健が歌うたび、音がオフになって口パク。ひどいだろ。最初に彼が忽那汐里の前で歌い出すシーンは、「ああ、あとで爆発力をもせるための演出かーなるほどー。」と感心しちゃったあたしバカじゃないか。３回目もこの現象が起こったときはもう笑うしかなかった。（一瞬「まさか音響不良なのか・・？」とも思ったけどそんなわけはない。）そして、「こんなフラストレーション溜めさすくらいなら、もうコユキ（佐藤健）歌うシーン出すな。」とまで思うように。４回目の時はもう絶対にこいつの歌声はないんだと確信。でも最後のフェスのシーンでやっぱり期待をしてやっぱり裏切られ。なんなんだ。バカにすんな。 これはもう、原作ファンや音楽ファンの目を恐れすぎた悲しい結果である。そりゃあもちろん、彼が地声で歌っていたとしたら、「なんだよ！佐藤大したことねえな！」とか「その程度でBECKやんな！」とかいう人もいただろう。でもそれがなんだというんだ。そんなのを恐れるくらいなら手を出すな。なんだろう。これってあれなのか。こういうネットで自分みたいな一般人が気軽にあーだこーだ批評批判を世間に発信できる時代の産物なんだろうか。ああ情けない。そんな声におびえる作り手が情けない。 他の部分はよかった。役者もテンポも。最近の映画はどんどん長尺になってけしからんと思ってたけど、今回はそれほどだらだらした感じも受けなかった。まあちょっとギターを巡ってのエセマフィア抗争みたいのは要らんと思うけど。それにしても、たぶん、下手でも何でも佐藤健が歌ってたらちゃんと気持ち良く☆をつけられたのに。佐藤がまずいなら、これから売り出すバンドのボーカルで吹き替えでもなんでもすればいいのに。そのくらいのことできるはずだしするべきだ。『NANA』は、上手いか下手かは別としてちゃんとプロが魂込めて歌ったし、ちゃんとバンドマンが監修して作った曲だったんだ。なんだよ『BECK』は。怠慢か。 良い仕事した役者達がかわいそう。　あ、カンニング竹山はちょっと好きになりそう。（10/9/13 劇場）