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[コメント] クレイジー・ハート(2009/米)

ジェフ・ブリッジスは救いようのない駄目人間ではない、だから救われる――人生はその程度に厳しく、甘い。どん底に堕ちたかに見えても、ロバート・デュヴァルのような友人がいる幸せを映画は奪わない。その徹底性を抑した作劇が節度である。主演両名によって演じられる終幕部にしてもまったく「大人」だ。
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**ネタバレ注意**
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現状は決して恵まれているとは云えない。だが徐々に上向きつつある。コリン・ファレルは救いの手をさしのべてくれる(これは必ずしもブリッジスへの憐れみからのものではない。ブリッジスからの楽曲提供はファレルにとっても「救いの手」である)。マギー・ギレンホールとの関係は良好だ。その息子も慕ってくれている。しかし、と多くの観客は思うだろう。「そんなにうまく行くはずがない。何か取り返しのつかない破局が待っているにちがいない」と。それは、私たちがすでに数多くの物語の定型を知っているためだろうか。もちろんそれも大いにあるだろうが、一貫して節度が保たれたこの映画において明らかに過剰な細部が破局の不穏を予告していることを、ここでは指摘しておきたい。

すなわちそれは、屋内(とりわけブリッジスのモーテル/自宅の部屋)の「暗さ」である。昼夜の別すら不明とするほどの暗黒を作り出す照明設計が、物語が一直線にハッピー・エンディングに向かうことを妨げる。最も決定的であるのはブリッジスが迷子を捜す「駐車場」のシーンだろう。一方で、幸せはやはり陽光が保証している。ブリッジスが幼子とブランコで戯れるシーン。デュヴァルとのボート釣りシーン。そして、ラストシーン。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)jollyjoker[*] ナム太郎[*]

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