[コメント] 蘇りの血(2009/日)
「蘇り」に力点が置かれているという決定的な相違はあるものの、和製『デッドマン』といった趣きが強い。「森林」や「小舟」が重要なモティーフとなる「移動」の物語。常識に囚われない、しかしどこか土着的な真実味を伴った生死の在り方(生死の境界の曖昧さ)。生々しくも戯画的な暴力描写。
このような作品の登場は「映画」の多様性にとって歓迎すべき事柄だろう。ヨーロピアン・ヴィスタ・サイズの画面とモノラル・サウンドというフォーマットからして現代日本商業映画の規格からまるで外れている。それがどれほど積極的な効果を発揮していたかはまた別問題だが(TWIN TAILは実に空間的な音楽を演奏していましたので、バキバキにサラウンドが効いた環境で見て/聴いてみたいとも思いました)、豊田利晃による画一化した映画群へのアンチ宣言はとても頼もしい(ちょっと意地悪な云い方をすれば、この程度のことで観客に「頼もしい」と思わせてしまう現在の日本映画界が頼りなさすぎるのですが)。
現代日本映画ということで云えば、ファーストカットをはじめとした岩山ごつごつ岩石ごろごろロケーション撮影が見られるというのが一番の嬉しい驚きだ。時代も場所も定かではなく、それにもかかわらず現代日本の口語とほとんど変わらない言葉が飛び交うという積極的にいいかげんな舞台設定のこの映画に何らかの説得力があるとすれば、それはこのロケーションに拠るところが大きい。志さえあればこの国でもまだまだ魅力的なロケーション映画は撮れるのだ。
中村達也ってこんなに渋味の効いた男前だったかしら? 芝居も上手くなってるんじゃないの? ということも思う。
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