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[コメント] 私の中のあなた(2009/米)

配給元のコピーは、「あなた史上最大の涙を誘う」などとタワケた事をほざくが、観るかぎり信頼によって結ばれた姉妹の健康的思考に、思わず襟を正さずにはいられない理性的な物語だ。カサヴェテスがそうした物語を欲したにも関わらず、ストーリーを分断するセンチメンタルな描写の頻発に齟齬を感じずにはいられない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







作品は大いに評価したい。例えば日韓はじめ東アジア映画に頻出する「しつこいまでの悲劇とそれを盛り上げる大げさな劇伴音楽」はここには存在しない。法廷と病院と自宅を行き来しながら、両親の提訴などという奇矯な行動に出た娘のエピソードは、やがて「正しい理性」に導かれた姉妹の、凡百の映画には観られなかった驚くほどに理に叶った結末に向けて、ゆっくりと歩を進める。この妹を演じたアビゲイル・ブレスリンの知的さといったら、キャメロン・ディアスがたじろぐほどだ。

だがそれを、いかにも「泣かせてやろうじゃないのよ」とばかりに脚色されたイージーリスニング風の旋律に乗せて、無言で挟まれる風景の中の家族達の「健やかな遊戯」は、それまでの舞台の張りつめた空気を弛緩させずには置かない。誰の指示によってなされたのかは知らないが、随分これで作品の価値が落とされたことは哀しい。正直な話、そうした要らない風景描写を1時間削ったら、随分シャープな視点の中編が出来上がるに違いないのだが…。

非常に惜しいことをしている作品である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tkcrows[*] uswing[*] ナム太郎[*] peaceful*evening

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