[コメント] リリオム(1934/仏)
画面はともかく、元々の原作がさほど長くないせいもあってか、イマイチテンポが良くない気もする。が、終盤に差し掛かると一気に目が覚めます。こんなユーモアに富んだラング作品も珍しいのでは。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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言わずもがなの、死から天国に至るシーン。その緩やかに上昇する幻想的な味わいの大俯瞰視点移動。当然ワンカットではないとはいえ、当時としては斬新な試みだったのかもしれない。そして、天国に至ると一転して、皮肉なユーモアに満ちた描写が何とも楽しい。チープな羽から美人秘書や地獄の番人(?)に至るまで、非常に楽しい。原作の味を、さらにイマジネーション豊かに膨らませている。
16年劫火に焼かれてさえも、やっぱり自分は自分にしかなり得ない。そして、その仮借のない自分の姿を知った時に、初めて自分に差し伸べられていた人の手に気付く。原作のリリオムほど、自虐的なムードや、寄る辺なさや、やるせなくなる程の切実さには至らないにしても、ポイントは決して外してはいないと思うし、そのポイントをさらに多くの人に伝わり易く描いた、という配慮が感じられた(善悪の秤は少し違和感あるけど・・・)。
そして何より、この映画のオリジナルキャラである、アントナン・アルトー演じる研ぎ屋(守護天使)の存在が良い。
(2009/4/5)
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