[コメント] 英国王給仕人に乾杯!(2006/チェコ=スロバキア)
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それだけにリーザユリア・イェンチが「今日は妊娠しそうだわ」と言うベッドシーンのほんの一瞬の間、彼女の顔がヒトラーへ変わるシーンは強烈な印象を残す。
優生学研究所のくだりや、ヒトラーの演説、肖像画や銅像の使い方など、ヒトラーと「純血」をうたうナチズムに対し、相当きつい風刺がちりばめられている。だが、それに心酔しているリーザの描き方は、そう単純でもなくなかなかに興味深い。
そもそもの発端からして、ナチスの圧力と反発が強まる中で、靴下を剥ぎ取られ、かえって民族主義を強める、そして恋人のいるホテルレストランを訪ねた際には、ナチス式敬礼という無思慮なふるまいはあるにせよ、彼女とその恋人は容赦ない嫌がらせを受けて追い出されてしまう。そして結婚、例のベッドシーン、出征、帰還、最後は二人の夢を託した切手を取りに戻って命を落とす。
きつい風刺と嘲笑にさらされたヒトラーやナチズムと比べて、リーザに対する視線は、そのナチズムへの心酔も含めて、一人のドイツ人女性、一人の人間へのそれとして、あたたかいものを感じさせているのではないか。それともそれは、単に私の思い過ごしだろうか。
そういう余韻を感じさせつつ、全体としては程よいユーモアと、誇り、ヒューマニズムなど多くのものを織り込んだ映画だった。
それに何といっても女性たちの描写は素晴らしいの一言に尽きる。個人的には最初に登場した彼女の、蜂を従えて闊歩するシーンが一番良かった。凛々しいし、格好いいし、キュートだし、セクシーだし、で、もうまいってしまった。
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