[コメント] エド・ウッド(1994/米)
罵声、憐憫や侮辱の視線を浴び続けてもなお、デップの貼り付けたような笑顔は動かない。真の厚顔なのか、実存の哀しみを押し殺しているのかグレーなところが笑わせ、また泣かせるところでもある。いや、むしろ全然笑えないか。実際にこうはなりたくないが、それも悲しい気がして、最終的には「うらやましい」という気持ちにヤラれて涙腺が決壊する。圧倒的な「全員集合」。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ティム・バートンはふとした瞬間に途方もなく美しい画を撮る。それはとてつもない水準の美しさである。「世界は退屈で薄汚い、何もかもうまくいかないクソッタレだが、言うほどクソッタレでもない、いやむしろ素晴らしい、よくみてごらん、それは君次第だ」と言う瞬間に、その美しさはとくにあらわれる。バートンは夢と虚構と異形の人だとよく言われるが、その真価が発揮されるのは現実との相克の中においてだと思う。決して諦観ではない。バートンは現実を描くときでも、スレスレの線で踏みとどまり、絶対に諦観におぼれない。私が彼を信頼するのは諦観を描かないからだ。彼がこの題材を撮るからこその絶大な説得力がある。
安っぽい遊園地のお化け屋敷も、停電も、オープンカーの洪水も、プロレスも、タコも、夢のように、同時に現実的に、めっちゃくっちゃに美しい。何というロマンティック。
あと、これほど美しい「全員集合」はあまり観たことがありません。このエドを「うらやましい」というのはいかにも軽率であるような気もしますが、それ以外にどう表現すればいいというのでしょうか。
<蛇足>
私の貧しい映画体験から引き出せるのは、他には『ビッグ・フィッシュ』と、ウェス・アンダーソンの作品群くらいです。『ビッグ・フィッシュ』のレビューは生半可には書けません。書いてるだけで涙が止まらなくなりますので。と書いただけで涙がにじんでしまうくらいなので・・・多分無理ですね。
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