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[コメント] マイ・ブルーベリー・ナイツ(2007/仏=中国=香港)

エリザベス(ノラ・ジョーンズ)の傷心は、ことさら誇張されることなくごく等身大の失恋として描かれる。アル中男の傷も妻の葛藤も、ギャンブラー娘の孤独も、みな深くはあるが何故か過剰さを漂わせない。肩の力を抜いたウォン・カーウァイの軽やかなジャブ。
ぽんしゅう

花様年華』から『2046』へと、強烈な耽美さと濃厚さを漂わせ、いささか煮詰まった感のあったウォン・カーウァイが、するりと身をかわしたような軽やかな映画である。それは、どこまでも内向するアジア的「情念」世界の愛から、外へ外へと向かうアメリカ的「愛情」世界への果敢なチャレンジの結果であろう。

描かれる精神世界のギャップに戸惑う観客をよそに、自らの濃厚な筆致は捨てることなくカーウァイ・タッチで「アメリカ映画」作りを楽しんでいるかのようだ。なかなかに、したたかな監督さんだと思うとともに、次回作がまた楽しみになる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)Orpheus ゑぎ[*] MM[*] デナ きわ[*]

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