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[コメント] ゲゲゲの鬼太郎(2007/日)

井上真央田中麗奈、どっちを選ぼうか悩んでいるうちに2時間過ぎた。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 僕は松竹という会社に「大人しい映画を撮る会社」というイメージを持っている。恐らくは『男はつらいよ』と『釣りバカ日誌』の印象が強いだけなんだろうけど、とにかくそういうイメージを抱いている。今作の監督本木克英は、そんな松竹で「釣りバカ」を3本も撮った監督であり、前作『ドラッグストアガール』で宮藤官九郎の脚本を得たにも関わらず“松竹臭い”大人しい作りに仕上げてしまった人だ。

 ただ今作に関して言えば、その手堅い作りが好印象を与えていた。無駄に奇を衒ったり派手さを打ち出したりするのではなく、お伽噺をしっかり描いた上で魅せるべきポイントをしっかり作り込んでいる。もちろん妖怪の着ぐるみなんかはかなりいい加減なんだけど、お話がちゃんとしてるからそこが引っかかってこないんだ。

 僕が好きだったのは「鬼太郎が実花を高校から連れ出すシーン」。あそこで「一反木綿に驚くクラスメイト」をしっかり見せてくれたとき、僕の中で「な、スゲえだろ?」的な優越感が広がった。まぁこの“優越感”はたぶん間違ってるんだけど、それでもやっぱり気持ちよかったんだ。こういう「ちゃんとしてる」小さなシーンの積み重ねがあるからこそ、西田敏行の輪入道のような“遊び”が映えてくるんだろう。

 ただ一点、お父さんが安易に生き返っちゃうところは好きじゃないんだけど、それも実花が鬼太郎を忘れることで帳消しになった。「妖怪のいない暮らしに戻る」ことに結末を持っていくのならそれもまたありだろう。そもそもお父さんは妖怪のせいで死んだわけだし。

 キャスティングも鬼太郎のウエンツ瑛士以外は、ルックス・演技力ともに手堅すぎるくらいに手堅い。そしてだからこそ異質な美形鬼太郎も呑めるようになる。要は大事なのはメリハリってことなんじゃないかと思う。そういえば悪役・空狐役の橋本さとし(この人知らなかったんだけど)も、ちょっと安っぽいコミカルな感じを含めてかなり良かった。

 水木しげる独特の妖怪お伽噺を、身の丈に合った演出でしっかり撮る。個人的な感覚で言えば、『妖怪大戦争』の三池崇史にも『鉄人28号』の冨樫森にもできなかった「地道で手堅い仕事」だと思う。かなり好意を含んだ★3。東映で作ってたらたぶんこうなってない。

 あとこれは物語と関係ないんだけど、田中麗奈演じる猫娘の超ミニワンピースの裾から見えるモサッとした“毛”が気になって仕方なかった。あれ恐らくは「猫毛のズロース」か何かっていう設定なんだろうけど、「田中麗奈の年齢(今年27歳)であの格好」という“物語に抑圧された無理”があの“毛”に表出してしまっているようで、何だか異常に目が離せない。あそこだけは松竹らしからぬ黄泉の国だと思う。

(評価:★3)

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