[コメント] 鰐〈ワニ〉(1996/韓国)
キム・ギドクの画家という仕事への未練が垣間見られる。青く塗られた亀と手錠、水底の応接間、そして膨大な数の似顔絵たち…。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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たいした筋のある物語ではない。一人の社会最下層に生きる男の、人生の点景の羅列だ。彼の暴力と性欲と金銭欲、それが総てである。彼には明日も昨日もない、今日という日が満足ならばそれでいい筈だった。だが、彼は未熟な愛を知る。邪魔する奴は殺してもいいくらいの愛を知る。それゆえに彼は人生を見誤る。そして、崩壊した後で自分の属した擬似家族の暖かさに気づく。
韓国ではこの作品を「悪い映画」と呼び、酷評した評論家も大多数だったと聞く。むべなるかな、の観はある。少なくとも、ギドクファンなればこそその深みを汲み取れはするものの、これでギドクと初めて出会った人は暴力とセックスばかりの描写に戸惑い、もっと深い人間同士の繋がりを見失うのではないか。
しかし、その背景に漂う言い知れぬ詩情は誰しもが感じるものではないか。まさに「ドブネズミの美しさ」。荒削りではあるが、明らかにギドクのアーティスティックな才能の為せる業である。ここに、良くも悪くもギドクの原風景は総て見い出される。
デビュー作ということで、甘めの4つ星。
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