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[コメント] 麦の穂をゆらす風(2006/英=アイルランド=独=伊=スペイン=仏)

青空のシーンがまったく無い。荒涼たる自然、鉛色の空。終始画面全体に漂う鈍重な空気が民族と国家の悲劇をさらに深く印象付ける。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それにしても何という厳格さだろうか。同じ夢を抱いたはずの仲間同士が殺し合わなければならない過酷な運命を、妥協無き徹底的な突き放しスタンスで描く。

特筆すべきは主演キリアン・マーフィの表情。怒りが悲しみに、そして絶望へと変わり、終には澄みわたった純粋さへと行きつく。最後の説得に訪れた兄を見返した際の、青い青い瞳が頭から離れない。

この映画は、その苛烈な表現に身を委ねそこから生まれる感動に浸るべきもの。そしてその苛烈さとは、例えば正視しかねる拷問シーンだとかそういうもののことばかりを言っているわけではない。これが”人間”を描いた映画であるということを改めて肝に銘じなければならないのである。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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