[コメント] 父親たちの星条旗(2006/米)
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銃弾をかいくぐって生き延びてきただけなのに、名写真のモデルになったことで「英雄」に祭り上げられた男たちが描かれる。それでも、自分たちは国債の宣伝マンと知りつつ、利用されることを拒まないヨーロッパ系のふたりはまだいい。アメリカ先住民である兵士のひとりは、あの「硫黄島に旗を立てた男たち」の伝説にウソがあることを知っている。そしてその一人ゆえに英雄視されるものの、仮面を剥げば差別される「インディアン」の一人であるということも。彼は耐え切れず酒に溺れ、英雄の座から脱落してゆく。彼の最期に至る数年は類を見ない残酷劇と呼べるだろう。
彼のエピソードを辿るにつけ、アメリカは決して自由と正義の国でないことが理解される。ナチを生んだドイツ系アメリカ人は普通に暮せたものの、日本系国民は差別され、監禁される境遇から逃れるために、常に第一線で勇敢に戦った逸話が頭をよぎる。黒人たちだって、正当な権利を得るためにヴェトナム戦争に参加していったのだ。…もちろん、日本がそれに較べていい国家だったとは決して言えないけれど。日本の罪は、東京ローズの甘い囁き声に乗って、自分の耳に届いてきた。
クリント・イーストウッドは、かなりシビアに祖国を見られる男のひとりだと理解できるが、この作品の姉妹編である『硫黄島からの手紙』が、逆にベタベタの日本礼賛映画にはならぬよう祈るばかりだ。戦争を神の目で映すことは一介の人間にできることではないが、イーストウッドにはそれに肉迫できる不偏の目を期待できると踏んでのことである。
>sawa38さま
先日、純粋にコメントとして、『イノセント・ボイス 12歳の戦場』に寄せられた貴兄のことばを拝見して、「自分は戦争くらい知っている」と思っていた天狗の鼻をへし折られた思いでした。この作品も3にするか4にするかで悩みましたが、「戦争を知っているという馬鹿な奴に限って戦場を知らない」ということばをもって4をつけた次第です。有難うございました。
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