「日本人」の怨嗟を一身に背負い、打倒「欧米」の一点のみで喝采を浴びつつリングに立ち続けた「単純明快」な黒タイツのヒーローレスラーが、実は「日本」の敗戦と同時に引き裂かれたナショナリズムとアイデンティティの中で、自分の存在意義を「欧米」のショースポーツに見出し、日本経済復興の象徴であるテレビジョンの普及と呼応しながら、現代のプロレスビジネスの礎を築いた「朝鮮人」のグローバルビジネスマンであったという時代と人間の「複雑さ」を描いてこそ、「力道山」の映画の名に値するはずである。