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[コメント] 俺は善人だ(1935/米)

真面目で心優しき会社員ジョーンズ−エドワード・G・ロビンソンが、刑務所から逃亡した犯罪王(殺人鬼)マニオンに瓜二つだったことから引きおこる騒動を描いた映画。勿論フォードはこういったコメディジャンルでも見事な才を示す。
ゑぎ

 特に前半はメッチャ面白い。マニオンに間違われて逮捕されたロビンソンと、逮捕時に一緒にいたことで巻き込まれる(ロビンソンの情婦に間違われた)同僚のジーン・アーサーが、警察署で尋問されるあたりまでは最高。まずは、レストランでロビンソンを通報するのがドナルド・ミークで、二人の顔演技がケッサク。また、到着した警官たちが想像以上の人数で、かなりのモブシーンになるのだが、このさばき具合も見事なのだ。警察署では、ロビンソンは何を云っても信じてもらえない。同様のアーサーは、開き直って、マニオンの情婦のふりをする、このあたりのアーサーのサバサバしたキャラ造型がメッチャカッコいい。この警察署のシーケンスは、記者たちの動きも含めて極めてダイナミックな演出だと思う。ちなみに、記者の中には、フランシス・フォードがいる。遅れて来る刑務所長は、J・ファレル・マクドナルドだ。さらに、報奨金が欲しいミークもずっと警察署 にいる。

 という訳で前半の出来が良すぎるので、実を云うと、後半になって、マニオン役のロビンソンが登場すると、私は少しスピードダウンしたと感じてしまった。あるいは、二人のロビンソンが同一画面に映るようになると、二重露光の品質チェック目線で見てしまった(粗を探してしまった)という部分もある。かなりフォーカスの甘いショットが多いのだ。スクリーンプロセスか?と思ったショットもあった。もっとも鏡を使って二人を見せるショットは秀逸だし、勿論、ツーショットでも綺麗なものもあるのだが。

 また、終盤は、アーサーが消えてしまう作劇なのも、面白さが減衰する要因だし、ロビンソン(ジョーンズ)の叔母さんの扱いも中途半端というか、カットされたシーンがあるような気がしてしまうのだが、しかし、クライマックスの展開の畳み掛けはやっぱり素晴らしい。この終盤でもミークが絡むのは、いかにもな戯曲的作劇だが、ラストシーン、港の場面で最後を締めるのが、新聞記者のフランシス・フォード、というのは、ジョン・フォードのもの(アイデア)だろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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