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[コメント] ミクロの決死圏(1966/米)

発想が、というより子供向けの発想に本気で取り組んでいる姿勢が新鮮だ。ただしあの抗体は絶対オスだ。75/100
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『スクリーム』という映画を観ると、映画においては、人間の無意識が産み出した原初的なモラルが、法則という形を取って立ち現れていることがわかる。例えば、ホラー映画において処女(ヴァージン)は殺されない、というのがそれだ。そういうものなのだ。

 さてこの作品では、プロメテウス号に乗り込む5人のクルーのうち、マイケルス(ドナルド・プリーゼンス)だけが死んでしまう(これは演出的には、殺されると同義だ)。これはなぜか。

 もうお分かりであろう、ラクウェル・ウェルチの体にまとわりついた抗体の残がいを引っぱがすシーンで、彼だけが彼女の胸の部分を担当し、あまつさえその役割を独占したからだ。これは人としてやってはいけないことである。

 いや、厳密に言えば、彼女の生命を救うために、まず頸の周りを優先する必要があった。そこでどうしても胸のあたりが残ってしまったのだが、しばらくは誰も手を出さなかった。私はこのとき、アメリカ人の胸の内にも「遠慮」の二字があることを発見した。だが、そのままにしておく訳にはいかなかったろう。いずれ誰かが手を掛けなければいけなかった。だから、初めに手を伸ばしたマイケルスの勇気は、賞賛されるべきだったのかもしれない。だが彼は、この役割を誰にも譲らず、一人で独占してしまった。これはいけない。しかも問題は、この一部始終をカメラが克明に記録していたことだ。これでは逃れようもない。私には、このとき彼の指の動きが、変な動き方をしたように見えたのだが、これは私の妄想かもしれない。今となっては確かめる術がないのが残念だ。いずれにしても彼は、人間のモラルというものの怖さを身に染みていることであろう(あの世でね)。

 はっきり言ってこの結末では、誰が敵方のスパイだったのかさっぱり分からない。だが世の中には、そんなことよりもっと重要な問題がある。私はそのことをこの映画から学んだ。そしてそれを記すため、これを書いた。

2004年11月29日(ヨンさんが何度目かの来日を果たし、日本中の一部が大フィーバーを起した日として記憶されるかもしれない日に)G

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] OK 3819695[*] 氷野晴郎[*]

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