[コメント] ロング・エンゲージメント(2004/仏=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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観客を翻弄するジュネに配給会社が騙されたのだ。 『アメリ』の監督・主演というだけで、勝手に「恋愛映画」として売り出した。 そもそも『アメリ』だって、「少女が人肉を食う話」だと思ってアルバトロスが買い付けたら嬉しい誤算だったという話だ。 だから松竹は『アメリ』の柳の下の泥鰌が狙えると思ったのだろう。
実物を観て慌てたに違いない。
日本のマーケットで定義される「恋愛映画」はハリウッドが構築したもので、そこにはSEXが存在してはならない。誰も『セカチュー』を恋愛映画と呼んでも『失楽園』は恋愛映画とは呼ばない理由はここにある。少なくともこの公開の前年「純愛ブーム」なんて言葉が出てきたものだからなおさら。
そこで急遽、直前になってミステリーを前面に押し出した。 恋愛映画もミステリーもあながち間違いじゃない。そういう“売り”を真に受ければ観客はそういうポジションにミットを構えて観るはずだ。そしてそのポジションに於ける自分の価値基準で「面白い」の「面白くない」の決めるだろう。
そんな売り文句に騙されるな。己の視点を信じろ。ジュネは配給会社や観客の「固定観念」を裏切って喜んでるに違いない。
これは、ジャン・ピエール・ジュネによる『プライベート・ライアン』だ。 いや、そんな生ぬるい映画ではない。戦争によって引き起こされた“群集悲劇”だ。泣いているのはすべて女性だ。
そこがまさに「異色のフランス映画」である所以。 フランス映画と言えば「女が男を翻弄する」と相場が決まっている。だが、この映画は逆だ。 オドレイやなんとかいう女やジョディ・フォスター(フランス語しゃべってるぜ!)の「男に翻弄され」「戦争で泣く女性」の物語だ。思い出してみるがいい。ファーストショットは「壊れたキリスト像」だったはずだ。そんな映画がどうして「ハッピーエンドの恋物語」で終わろうか。
しかし無駄に金のかかった映画だ。 洪水で人を助けたワンショットやジョディ・フォスター登場の市場なんか、すごい金かかってるだろうよ。
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