[コメント] トニー滝谷(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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て言うか描かないと意味がない。「トニー滝谷は本当にひとりぼっちになってしまった」ところで終わるのだ。絶対にそうでなくてはならない。何故彼女に電話なんて中途半端な事をするのだろう?男のロマン?いや、本当の男のロマンは、「自分より先立った妻」と言う存在だ。それこそは完璧な女性像だ。ひとりぼっちになる事で、完璧な愛が完成するのだ。
改めて思ったのだが、トニーの中に、泣いていた彼女の記憶だけが残ったのは、トニーにとって彼女が必要だからではなく、亡くなった妻にとって、彼女のようなココロの在り方が必要だったからではないかな。妻も自分のために泣ければ、服を買わずにすんだのだ。きっと。トニーも妻のために泣ければよかったのかもしれない。でも、最後まで泣けない。だから、電話なんか必要ない。ひとりぼっちなのだ。「彼女」が泣いたのは、その妻の切なさと、その妻の服を自分に着せようとしているトニーの孤独な愛の切なさゆえだ。
それから、あの衣装部屋の描き方では、「ちょっと洋服好きのおしゃれな女性」の域を出ていません。我慢できないほどに買わなくてはいられない妻の、悲壮なまでの異常性が微塵も表れていない。声も態度も変わるほどに買わずにはいられなかった服なのだ。その服に囲まれたら、思わずもらい泣きしそうになるほどの服なのだ。
だからあの衣装部屋は、おぞましいほどに魅力的な空間でなくてはいけない。
端的に言うと、とにかくまず量が少ないよ。
原作にない昔の男のシーンも蛇足。市川監督は、確かに「つまらない」人だと思う。自嘲の表現はわかるけれども、やっぱり蛇足。
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