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[コメント] オペラ座の怪人(2004/米=英)

本作ほど、幕間を入れて欲しい。と思った作品はありません。(表現上の間違いが指摘されましたので、一部を改訂しました)
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 今回この作品を観て、長年疑問に思っていたことが一つ解消され、気分的にはかなり爽快になった。

 私は中学から高校にかけ、一時期推理小説に凝ったことがあった。読むのは大抵海外物で、その中にはルルーの「黄色い部屋の秘密」や「オペラ座の怪人」も入っていたが、はっきり言ってルルーの作品はどうも好きになれなかった。

 その理由は単純で、トリックがあまりにもお粗末だと言うこと。「黄色い部屋の秘密」は完全密室殺人事件の唯一の作品とかのふれこみだったが、そのトリックは「ちょっと待て」なものだったし、「オペラ座の怪人」に至ってはトリックがトリックになってなかった…それがフランス的と言えばそれまでだけど。しかしこの二作は推理小説としての評価はたいへん高く、特に本作はミュージカルとしてたいへん高名。

 はっきり言ってしまうと、「なんでこの程度の作品がそんなに有名なのか?」というのが長年の疑問だった。

 だが、これを観てはっきり分かった。要するに私が間抜けだったと言うことを。

 なんだ。「オペラ座の怪人」という作品は推理作品じゃなかったんだ。特殊な三角関係を描いた恋愛ドラマだったんだな…何を今更って感じだが。

 その分、物語は本当にベタな恋愛ものとして作られている。実は私はちょっとこういうのは苦手だし、話自体もやや薄っぺらいきらいがあり。

 しかし本作の場合、最大の売りがある。それは何より演出が際だってると言うこと。  オープニングのシャンデリアが点灯され、古びたオペラハウスが原色に変わっていくのは予告編で度々流されていたが、それ以外の演出だって凄い。

 最初のモノクロシーンは古い映画に似せてわざと画面を荒らし、まるでモノクロームの絵画が動いているかのように見える。ここからぐいぐいと画面に引き込まれていく。現代をモノクロで、思い出を鮮やかなカラーで演出するのは古い方法ではあるが、この作品には実によく似合っている。それにオペラだけあって、重厚な音が素晴らしい。音響の良い映画館で観ると、その音の波に飲まれそうになった。ファントムのテーマは特に耳に突き刺さってくる。

 それと、舞台劇というのは、あくまで固定した舞台の中で演じられるため、観客の視点までも固定されてしまうものだが、本作はカメラが縦横どころか上から下まで本当に良く動く。そう。舞台劇を映画化する場合、映画でなければ演出できない部分を強調する必要があるものだ。その辺よく分かってらっしゃる。映画の特性をフルに用いた演出に関しては徹頭徹尾素晴らしい!と言える。

 ただ一方では…キャラクタがなあ。どう見てもロッサムじゃ力不足だろ?歌の上手さで選んだとしても、華が無さ過ぎ。普通よりちょっと綺麗な女性役でしかないんだよな。だから、ファントムが執着するのがあんまり理解できないのは問題だよ。それに残念なことにファントムのコンプレックスと、才能の誇りというものが、もうちょっと演出できれば。

 それと、本作の大きな問題。2時間半は長すぎ。舞台の場合、2時間を超えるものは幕間が入って一息付けるのだが、それが無いものだから、緊張感の連続で疲れてしまった。古典的な映画だったら幕間のある作品もあるので、どうせ演出を考えるならば、敢えてそれをやってみても良かったんじゃないだろうか?それだったら幕間入れて3時間でも大丈夫だったよ。

 画面演出に関しては完璧。ただそれ以外をもうちょっと頑張って欲しかった。

(評価:★4)

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