とりあえずは、モーガン・スパーロック、ご苦労様。体張って自らの体が悪くなるのが目に見えている実験に挑戦したチャレンジ精神は買います。その自虐的な発想がユニークであり、映画が話題になるのは納得できる。

　ただし、この映画から大きな発見があったかというと、少し疑問も残る。マクドナルドへの皮肉たっぷりの風刺には思わず笑ってしまうが、マクドナルドを食べ続けるのが体に悪いことは実験をしなくても明らかなのだ。たとえ過酷な実験を耐えたとしても、この映画ではそこまで新しい発見を提示したとは思えない。ビジネスのために栄養のことを考えない食べ物を大量に販売するのがマクドナルドだということは、反マクドナルド党からすれば当然の事柄であり、この映画ではマクドナルドの悪事を暴露したり、アメリカの肥満の問題を根っこから追及するまでは至っていない。その点が気にかかり、映画の内容の良さではなく、30日間マクドナルドのみで生活するという実験の話題性が先行している感が否めない。面白いエピソードも散りばめられてはいるが、映画は結構単調に展開され、中盤以降息切れを感じさせる面もある。

　厳しく言えば、今回はこの題材で興味深い映画を作ることはできたとは思うが、スパーロック監督が次回作を発表するとすると、その出来にはあまり期待は持てない気がする。