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[コメント] 大いなる西部(1958/米)

誰も書いてないので書きます。エルサレム問題な解釈です。長いです。ワイラー監督凄いです。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ジムと恋人が馬車で町に繰り出す道中でのヘネシー一家のボンクラ息子の登場と、その後の手荒い祝福、その手荒い祝福に対するテリル一家のヘネシー一家に対する御礼返し。その光景はまさにパレスティナとイスラエルの報復合戦の関係を表している。これは極めて慎重に双方の事の発端をアレンジしているがどう見てもそうにしか見えない。

報復に継ぐ報復を繰り返す様は特にそうだ。イスラエルをテリルと見て、パレスティナをヘネシーと見るとよくわかる。

まずは、こうだ。双方の家の造りを見てもわかるし、テリル側ではパーティーを催す財力があるがジムの手荒い歓迎に対する報復にいった際のシーンでも分かるように、ヘネシー側の陣内にその余剰の体力が見受けられない。これをどう見るか?シオニズムで建国したイスラエルとイギリスの三枚舌外交でドン底に落とされたパレスティナとの関係と重なり合うのは偶然?そしてヘネシーをヤセル・アラファト率いるファタハ(パレスティナ解放運動:この映画と同じ1958年設立)テリルを初代イスラエル首相ダヴィド・ベングリオンとしたと感じるのは偶然か?

いや、違う。必然であり、ウィリアムワイラー監督は確信犯で構築していったと思う。じゃないとエルサレム帰属問題を彷彿とさせる、あのビックマディ牧場は考えつかない。あのビックマディ牧場は双方の牧場で飼っている自分の命の次に大切な『』ににとって乾期には絶対に必要な水がある。それは双方にとっての聖地が存在する事を意味している。その聖地がなければ牛は死ぬ、現実のパレスティナ問題でもその土地は『岩のドーム』と『嘆きの壁』がある聖地で絶対的な場所である。

映画では、その場所の権利を握っていたのは祖父の『テリル、ヘネシーの双方に水を公平に分ける事』という平和の意志を受け継いだジュリーだった。そしてパレスティナ問題でのエルサレム帰属問題についての手綱を国連が握っていた。その国連はエルサレムを国際管理地域に指定して、どこにも属さない土地だと明文化したが第一次中東戦争〜第三次中東戦争における勝利でイスラエルはエルサレムを『統一された首都』と一方的に宣言してしまう。そう、テリル一家がジュリーの牧場内にある川の水を飲みに来たヘネシー一家の牛を追い払ったようにテリルはどこにも属さないは万人の為に提供された場所を占拠し我田引水を企み川を利用しようとした自分とは違う人間を排斥しだしたのだ。まさに国連を無視した当時から平気にダブルスタンダードを掲げたアメリカの援助を受けていたイスラエルのエルサレム占拠。

ここまでが映画内でのワイラー監督の鋭い描写による現実世界のおさらいである。で、そのあとのグレゴリーペック演じるジムである。ジムを正直アメリカかアメリカ以外の第三国を表しているのだと思ったけれども、これはワイラー監督自身では?それとも神を表したのかもしれない。終始、人間界では重要と思われている事を避けてきたジムはその避けた事について『意味がない』とした。そう、意味がないのだ。双方の神は一切そのような行いによる争いを支持していないしコーランでも旧約聖書にも一切その様なことは書かれていないはずなのに…その神ことジムは双方に血が流れない方法をとろうとするが現実世界と同じように無意味に流れてしまう。その描き方は凄い!凄く的を射ている!

さらに、本当に見事に世界情勢を読みとって描いたラストの『テリルとヘネシーとの決闘』は神業でありキューブリックの先見など目ではない。それはヘネシーが実の自分の息子を自らの手で下した所から自分の過ちと本来の問題点を悟ってから決闘に挑んだのと、一方自らの行動が正しいと感じなんら疑問を抱かずに決闘にのぞんだテリルの描写。これは現代の問題に置き換えると、「自分たちユダヤ人は長年ヨーロッパなどでいじめられ、特に第二次世界大戦中には、ドイツで600万人が殺された。これは自分たちの国がないからだ!だからシオンの丘に帰ろう!」とシオニズムのみで行動し世界の同情と世論を背に受け建国したから正当な立派な国だから悪くないんだという歴代イスラエル首相のスタンスと、「我々が住んでいたのに非合法で奪い取られた聖地を取り返すんだ!戦争では駄目だったがテロで泥沼に持ち込んで行こう!そして世界の目を本来同情されるべき対象は我ら貧しいパレスティナ人だとわからせよう!」と頑張っていたが、これ以上無益な血を流すのはやめようと思い始めたヤセル・アラファトの思想を表しているのでは?凄すぎる!

そしてワイラー監督は問題の解決を進まぬ双方の溝の修復は絶望的と見たからかラストはそのテリルとヘネシー双方の痛み分けで終わりにしたが、現実世界での問題の解決の方法はそのような痛み分けの同じ人間の同士討ちだとすると悲惨すぎるので私は現代のこの問題は現イラン大統領(2002年3月現在)であるハタミ大統領が進める「イスラム社会を敵視する西欧社会と西欧社会を敵視するイスラム社会の双方に異なる文明同士の対話の大切さの呼びかけ」が一番の展開だと思う。そう、「開放性」と「寛大さ」を全人類が全ての文明が全ての社会が備えることがこれからの『文明の衝突』を防ぐ特効薬だと思います。

そして無駄な空爆をするぐらいなら、そのミサイル代と軍事費を恵まれない国々のワクチン注射にまわしてください。ミサイル10発分で何万人が助かるのです。それが一番のテロ根絶やし運動なのです!

タリバン兵の主な兵は元はアフガニスタンソ連侵攻時にパキスタンに逃れ出た難民なんです。ブッシュさん理解できる?

《最後》この映画は本当に素晴らしいアメリカがある!!素晴らしい勇気!!是非、もう一度見てください!!あなたが選ぶのは5点のみだ!!

ペック最高!

最後まで読まれた方本当にありがとうございます。雑な文でスミマセン…

2002,3,22

(評価:★5)

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