[コメント] オアシス(2002/韓国)
恐れを知らぬ挑発者、イ・チャンドン。こいつは9回裏無死満塁の場面でド真ん中に直球を投げやがる。投げた球ときたら160キロの豪速球で、キャッチャーを吹っ飛ばしうなりをあげながら観客の心にでっかい風穴を開けるのだ。
だからわたしは、この映画を、腫れ物を扱うようにはしたくない。「所詮健常者の作った映画」そんなことは百も承知だ。作ったイ・チャンドンなんか万も承知だろう。なぜ障害者の恋愛を健常者が描いてはいけないのか?いけなくなんかないのだ。健常者の方が退いちまってるだけなんだ。「差別主義者」の謗りを受けることを畏れて。「おまえはなにもわかっていない」と否定されることを恐れて。イ・チャンドンは、それを、怖れずやってのけた。いや、それどころか一歩も二歩も踏みこんで、こちらを挑発してみせる。なんという大胆さ。そしてこれは「ものづくり」に対する真の情熱であり勇気であり誠意だとわたしは思う。
もちろん、この映画を観て酷いと怒る障害者やその家族だっているかもしれない。それでもかまわないじゃないか。だって、少なくともこの映画は敬遠なんてしていない、ド真ん中の直球なんだから。「正解」である必要なんかない。そもそも「正解」なんかない。あるとしたら、健常者の数だけ、障害者の数だけ、つまり人間の数だけ、「正解」はある。打たれたっていいからド真ん中に直球を放ること。それすらできないわたしたちに、イ・チャンドンを罵る資格などあろうか。
(04.04.30@梅田ガーデンシネマ)
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