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[コメント] オアシス(2002/韓国)

それぞれのオアシス、それぞれの影。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ジョンドゥに「肉体」を犯されそうになる以前に、すでにコンジュは周囲の健常者に散々「心」を犯され続けてきた。そして一方は裁かれ、もう一方は決して裁かれることがない。なんて理不尽なんだろう、とまずは率直に思う。

周囲の健常者の言動という名の「影」に怯える一方で、彼女の存在そのものが、周囲の健常者にとっての平穏な生活に投げかける「影」とみなされていることを、薄々認識してたのではないだろうか。そのように彼女にとって「影」とは、二重の意味で不吉なものとして存在していたように思える。

コンジュやジョンドゥと周囲の健常者。それぞれのオアシスと、それぞれの影。あたかも一枚のコインの表裏のようで、それぞれの世界が面と向かい、溶け合うことは決してない。何故そうなってしまうのだろう、ただどうしようもなく悲しさがこみ上げてくる。

そしてジョンドゥとコンジュを見つめるこちらも、不吉な影に怯える。二人の時間が幸せの色を帯びるほどに、その先どれだけ困難が待ち構えてのだろうと、そんな不吉な予感が頭から離れない。偏見を完全に払拭しきれない自分の凡庸な頭では、どうしてもハッピーエンドを描くことができないのだ。

しかしジョンドゥは愚直なほどストレートな手段で、それをやってのけた。見当外れなのかもしれなけど、あえてこのラストはハッピーエンドだと断言したい。光で満たされた部屋の中の彼女は、もう影に怯えることはない。これからも彼女は部屋に篭りきりで周囲から忘れ去られ、自分の足で世界の外へと出ることはないのかもしれない。それでも揺ぎない何かを手に入れた彼女の部屋には、これからもずっと光が満ちていることだろう。それでいいのではないだろうか。世界の外側にあるオアシスなんて所詮幻のようなもので、真のオアシスはそれを視る一人ひとりの心の中にあるものなのだから。

少し違うかもしれないけど、ラストに少しだけ見える彼女の姿にジョゼを思い出した。

(2006/02/26)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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