女の子が言う「普通の顔の人」。これがすごく印象的。犯人と思しき人物は皆ちょっと変質的な顔をしていた。どう見ても何かやらかしそうだなと。この刑事たちも色んな状況証拠を元に犯人像を浮かび上がらせたにせよ、やはりどこか外見で判断したところもあっただろう。あのソン・ガンホの唖然としたクローズアップの表情がそれを良く表していた。「そんな普通の顔した特徴のない奴なんていっぱいいるじゃないか」と。たしかに、あの事件当時、ただでさえ暗い農村で戒厳令訓練に於ける一層の照度低下による犯罪土壌の確立、エロ本よりもレイプ殺人事件の記事に欲情する人々、まさに犯罪者予備軍がひしめき合うこの村ではだれもが容疑者になりうる状況だったわけだ。

ラスト、ほんとにここで殺人があったのかと思わせるのどかで安らぎのある田園風景に事件後十数年のノスタルジーを感じる一方、どこかで普通に生活している凶悪殺人犯の嘲笑いが聞こえてきそうでなんとも言えない余韻が残る。控えめな音楽も効果的だった。

余談だが、ソン・ガンホが友人に似ていて、妙に親近感を覚えながら観る事ができた。