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[コメント] 3−4X10月(1990/日)

数ある彼のフィルモグラフィの中で、映画の神に愛された作品はコレだけだと思う。
pori

すべてが無意識に彩られた架空の思い出の断片。

ソレを一つのストーリーとして繋いでいく試み。ココで北野は自らの死の予兆とかつての”青春”の死を重ねている。故に幻想でありながら、強烈なリアリティを獲得している。

この後、彼はココで手が届きながらも自分のモノにならなかった幻想の正体を掴む為に「ソナチネ」と云う名の映画でこの場所を再訪する。しかし、自分自身がソレを理解する為の客観性と、無意識の無意味性を意識的に再構成すると云うパラドクス的ロジックを導入した結果、真実は歪み、誤解を生み(自分自身に対しての)彼は映画の完成と共に「無意識の」自殺を遂げる。

しかし、本作が完成した時点では、北野は死んだはずの青春の化身である柳ユーレイやダンカン、ガダルカナル・タカの存在に希望を見だしていたのでは?と思う。ソレが自身の死の予兆(生き急ぐ心)や運命を凌駕する壮絶なラストを「どうも便秘を放りだすようなもんで…」とでも言うかのような夢オチでおとす北野のテレにこの作品の骨頂と美しさがある。

北野に於けるこの二つの映画の関係性は、宮崎駿の「ナウシカ(漫画版)」と「もののけ姫」の関係と相似形だと思う。 双方に石田ゆり子が出演しているのは偶然か?

北野の隠された理想がすべからく反映されたこの映画で、北野の舎弟を演じる渡嘉敷勝男は本当に美しい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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