コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] サンセット大通り(1950/米)

女には、妻や娘や母や嫁、淑女や娼婦といった他に、女優という名の顔がある。
G31

・・・のかどうか知りません。ビリー・ワイルダーという監督は、そんな風に描いているのかなあと思った。女の持つ複数の顔の一つとして、この作品では「女優」に焦点をあてていると。

ただビリー・ワイルダーって、悲観的な人だよね。女って物を、「男がそう扱うように人物を演じる存在」として描いているように感じた。妻として扱えば妻となり、可愛い娘ちゃんとして扱えば可愛い娘ちゃんになり、女優として扱えば女優をさえ演じてしまう。その意味で、ノーマ・デズモンドというモンスターを作り上げた男(たち)には、それなりの罪と責任がある。バランス取れてるなと思えるのは、男もこの映画では、本人の意思とは必ずしも関係なく、社会の求める男像をなぞらざるを得ない存在に描かれている所。女に溺れすぎない事をカッコイイとする価値観は、正直さを至上とする現代的な感覚からすると理解し難い部分もあるが、男としてなんとなく憧れるものがある。じゃ、その場合の社会ってなんなの?ってことだが、これはこの映画では描かれていない。暗闇で映画を鑑賞する「観客」の存在が、その一部を形成することが仄めかされるだけ。

どちらかというと個人的には、そんなノーマ・デズモンドなる女優像をさえ、グロリア・スワンソンは喜喜として演じているように見えたけどな。別の監督さんだったら、カーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』の歌詞みたいに、彼女が一人で世界の頂点に立って、自分のためだけに祝杯を上げるなんて話にできたんじゃないか。女優業こそ女の本当の職業である、みたいにね。実際サマセット・モームの小説にそんなのがあったけど。

以上を要約すると、グロリア・スワンソンの鬼気迫る演技には皆さんと同じように恐怖を感じたが、それをビリー・ワイルダーなる皮肉屋な映画監督が往年の大女優に与えた残酷な仕打ちだ、みたいには感じなかった。

・・・まだ長いな。グロリア・スワンソン、ちゃんと大女優に見えたよ。

80/100(03/08/15見)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)Orpheus uyo けにろん[*] ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。