[コメント] エデンより彼方に(2002/米=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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とにかく良くできた映画。 セットがスゴイ。衣装がスゴイ。撮影がスゴイ。脚本がスゴイ。俳優の演技がスゴイ。
1957年。栄光のフィフティーズの黄昏。迫り来る破滅の予感。 「戦争が終わり、世界の終わりが始まった」時代。もう、そこまでベトナムは来ている。 その残照に咲いた一輪の花。
夫の暗い欲望。ソレを理解できない時代。 夫が飲むベークライトのマグカップ(しかも緑!!) 夫婦のベッドサイドにはシノワズリー(中国趣味)のスタンド。 黒人の女の子の清潔なカラー(衿)飾り。 静かで優しい、知的でいて強さも併せ持つ、ホンモノの男の黒い肌。
やり直せると信じた夜。 その夜の夫の白いタキシード(ハンフリー・ボガートみたい) その首を飾るシャープな棒タイ(黒)
燃える紅葉の色。生の最後の一瞬を燃やし尽くすように。 その生命に真摯であれと勇気づけるように。終わらないかに思えた永遠の「美しい秋」
季節は過ぎ、寒い冬が来ようとも、ソレを否定し、逃げ去るように南の国へ逃げ出すが、そこには運命が待っていた。 決定的な破局。
人生をもう一度生きなおしたいと願う彼女に泣かされた。
やがて別れの瞬間は来るが、それでも笑って手を振ることが出来る。 だって、生きていれば、必ずまた会えるから。 季節は巡り、いつしか街路樹にも花が咲いている。誰にも気づかれずに。
その芽生えは新しい時代が苦しい物であろうとも、人が人らしく生きる為の余地はあるよと教えてくれる。 「そう、きっとまた会える。その時は口に出して、好きだと言える」
どんなに絶望に見舞われても、生きるよすがを無くしたように見えても、季節は巡り花(白)は開く。 「明けない夜はないもの」と思う。
自分が自分であるために、誇り高く、顔を上げて生きていこう。 この魂の中にある「女性の善きもの」と共に。
久々の本格派女性映画。それをこの若手男性監督(しかも同性愛者)が撮ってくれた事を心底嬉しく思う。 女性を敵でなく、理解できないなにか別種の生き物としてではなく、弱く、しかし心正しい普通の市井の人間として、深い共感と優しさを持って描いてくれた事に、本当に感謝したい。
ヘインズ監督に100万回のキスを!
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