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[コメント] ジョゼと虎と魚たち(2003/日)

胸をかきむしりたくなる程の敗北感と共にいつまでも残る、残酷なまでに優しいメロディ「ハイウェイ」
pom curuze

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕はツネオに似ている。そりゃあんなにカッコよくは無いし、モテもしないけど。

結構優しくて、結構頼れて、ホントは優しくなくて、ホントは頼りなくて。

ちょっとカワイらしくて、下半身に障害を持ってて、余り家から出た事が無い同年代の女の子と出会ったら? きっと外に連れ出してあげたくなる。そう、連れ出して「あげたくなる」

これは優しい行為なのだろうか?彼女の為?自分の為?親切な行為をしている自分への満足感?善なのか偽善なのか。

きっと僕も逃げるだろう。きっと僕も、前の彼女の事を思い、今の彼女の前で堪えきれずに泣くだろう。そんなに強く立派な人間じゃない。ツネオも僕も。

「連れ出したく」なったのなら、逃げずにいられたのかな。「連れ出してあげたく」なったから逃げてしまったのかな。愛情と同情との入り混じった感情。中途半端な優しさ。そんな自分に虫唾が走るほどの嫌気がさす。情けない自分への、胸をかきむしりたくなる程の敗北感。それが僕だと認めざるを得ない敗北感。

ジョゼはそれを良い経験として、それこそ「それもまたよしや」とつぶやきながら生きていく。前を向いて生きていく。

最後ツネオ(僕)は泣いた。弱い自分を認め、その情けなさに泣いた。でもこれでツネオもそれを良い経験として、少しは強くなれるだろう。少しは優しくなれるだろう。

そんな風に前向きに考えようとする僕を、今の彼女にひどい思いをさせてしまっている僕を、「しょうがないさ」と許してくれ「これからがんばればいいさ」と励ましてくれているかのような、残酷なまでに優しいメロディが流れる。

そのメロディが頭の中で流れる度に、敗北感と優しさとほんのわずかの希望が僕の胸をしめつけ、また涙が流れてくる。あまりにもやさしいメロディになみだがながれてくる。

(評価:★5)

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