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[コメント] ゴジラ対メガロ(1973/日)

ガメラが子供向け怪獣映画として徹底していたのに、ゴジラのこのざまは何だ。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画こそ、東宝がゴジラで「子供向け怪獣映画」を作ろうとして、見事にそのツボを徹底的に履き違えている作品である。何がダメなのか?いろいろ理由はあるが、昭和ガメラシリーズと比較すれば一目瞭然だ。

 『ガメラ対大魔獣ジャイガー』のレビューでも書いたが、ガメラが至極痛快なのは徹頭徹尾子供が楽しめるような筋立てとサービス性にあり「ガメラは僕ら(子供)の友達だ!」と思わせるような感覚に仕上がっている。何せ、嫌いなものが「にんじんとたまねぎ」(公式ガメラHPのデータより)なんである。こんな怪獣は他にいない(笑)。まあそれはともかく、思わずガメラに感情移入してしまうような構成は見事なのだ。やられてもやられても、どんなにピンチになっても形成逆転で立ち上がり、勝利を掴むガメラ。この健気さが良い。

 ところが本作はどうかというと、その辺が全く抜けている。人間のロボット・ジェットジャガーが唐突に巨大化しても構わない。海底王国シートピアがなぜか宇宙へガイガンを呼び寄せたりするのも……まあ何とか目をつぶろう。しかし一番まずいのは、ゴジラにガメラ同様の感情移入が出来ない、出来ていないということだ。  メガロに立ち向かうジェットジャガーの前にガイガンが飛来、怪獣2匹はタッグを組んでジェットジャガーをタコ殴りにする。この時ジェットジャガーが健気に見えるかというと、見えない。一方的過ぎて窮地を脱するような展開が無いのだ。そしてその窮地を救うのがゴジラなんである。これで2対2のタッグマッチだ。

 ん、待てよ? ガメラって常に1対1のタイマンだぞ。どんな敵でも一人(一匹?)で立ち向かうから健気に見えるはずなのだ。どんなにピンチになってもくじけずに、最後に勝利を掴むからいいのだ。だからこそ子供は応援するのだ。怪獣の頭数さえ多ければ子供が喜ぶとかそういう問題ではない。そんな勘違いをしているからこそ『怪獣総進撃』で「11大怪獣勢ぞろい」、『オール怪獣大進撃』で「9大怪獣勢ぞろい」などと謳っておきながら、ほとんどカメオ出演状態の怪獣が出てきてしまうのだ。

 おまけに戦いの最中でガイガンが逃げ、敵は一人減って2対1になってしまった。「正義の」ゴジラとジェットジャガーはここぞとばかりにメガロをタコ殴りにする。ひどい!はっきり言ってこれは卑怯過ぎる!よく怪獣関連の書籍で「ゴジラはシリーズ途中から人類の味方になった」とあるが、そんなのは建前で、実は思いっきり悪なんである。「地球の危機だ」から怪獣と戦うのではなく、新怪獣が現われたから「よーし、いっちょケンカ売ってやれ」という感覚にさえ思えてくる。これじゃ感情移入も出来なくて当然だ。

 だとすると本作は、ゴジラが悪であることを証明した作品として逆の意味で重要(?)かもしれないが、覚悟して観た方がいいだろう。ガメラを低くみていた人でも、ガメラシリーズの方がよっぽど面白く思えるかもしれない。

<以下、追加コメント>

 以前ここのコメントで最後に「今度のゴジラは4匹も怪獣を出して大丈夫なのか?」と不安げなことを書いたが、どうやら大丈夫どころかどエラいことになっているらしい。公開1ヶ月前でたちまち期待ムードが高まってしまった(コレを書いているのは11月下旬)。恐るべし金子修介監督。

 まあ最新作はともかく、シリーズだって進めばあんなヘンテコな作品だって出てくる。寅さんや007だって全部が全部傑作だというわけではないのだろうし、どのシリーズのファンにしたって「これはヒドイよなあ」と思える映画が1本くらいあるはずだ。ゴジラの場合は、本作がまさにそれ。だからホント、覚悟して観て下さい。

(評価:★2)

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