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[コメント] Death Note デスノート 前編(2006/日)

映画化の失敗した方。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作のマンガを全く正確に再現することは不可能であるし、そもそも違う媒体を使う以上、それそれの特質というものがあるのであって、それにあわせて脚本・演出・設定などを変えるべきだと思う。そこで重要なのは、何を変え、何を切り捨て、何を付け加えるかということ。この作品では完全にその取捨選択に失敗している。

たとえば、主人公の人格描写は物語展開の核となる部分であり、時間を割いてでも詳細に説明する必要があっただろう。原作では過剰と思えるほどに主人公の性格を強調していた。映画ではそれを省いたために、主人公がずば抜けた知能を持つという点がわかりにくい。また、理想の世界を創るためであれば、如何なるものをも犠牲にするという意志もあまり描かれていない(ラストでおもいっきり見せつけられるが、それまでとの繋がりがスムーズではない)。

また、原作のキャラクターを無駄に正確に再現しすぎた点としては、Lとリュークの行動や癖が挙げられる。リュークのCGに関しては言わないにしても、彼のオーバーなリアクションは実写で見ると寒い以外何の効果も生まない。また、Lの顔つきや行動を原作通りに再現することも、実写ではかなり嘘くさく見え、観客を映画の中にのめり込ませることを妨げている。眼の下のクマや服装、食べ物、紙の持ち方などは、このプロットにとって必然的ではない部分なので思い切って全く変えてしまっても成立するだろう。あと、南空ナオミの全身レザーって服装も実写だと浮きまくり。特撮ヒーローものみたい。

結局、この原作の魅力は細かい伏線&設定の上に成立するプロットであり、個々のキャラクターの設定はそのプロットを進行させるための作用因にすぎないはずである。それにもかかわらず、映画化において重視されているのはキャラクターの細部の再現であり、切り捨てられているのはプロットの詳細な伏線である。

総じていえるのは、映画化に向けて原作を越えてやろうという過剰な意欲が、自身の足下を見失わせたように見える。すなわち、最後の原作にはない展開(これは実際、原作に比肩しうる)を導くために、それ以外のすべての伏線が疎かにされた感がある。

そして、最大の問題は、鹿賀丈史が主人公やL以上にできるヤツにみえたことだろう。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)HILO[*] ムク くたー[*] リア ロボトミー

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