コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 笑の大学(2004/日)

キャスティングミス。070512
しど

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もともと、芝居をそのまま映像に焼き写したような作品は好きじゃない。これも、そんなつまらない作品の一つだ。とはいえ、☆三つは、私の価値では十分楽しめる作品としての採点であるから、この作品は、本来、もっと面白くなったのではないかと思うし、その最も大きな要因は、稲垣吾郎を起用した点につきる。

二人芝居というむずかしい設定なのに、外見は全く作家っぽくなく、芝居もできない稲垣をキャスティングしたプロデューサーは、当初からクオリティを求めていないことがわかる。役所公司の方は、序盤の堅物設定が中盤から変化していく演技に引き込まれていくのだが、稲垣にカットが変わると流れが止まる。まるで、劇中で揶揄されるアオカンの「さるまた失敬」や座布団回しのようだった。きっと、劇中同様、「稲垣が出演することによって(興行成績が期待できるから)、スタッフ達が安心して製作に集中できた」のだろう。集中した割りに結果が伴わなかったのは残念だが。

さて、ここからは余談。映画版の後で、WOWWOW放映の(98年再演の)演劇版も見ることができた。稲垣の作家役は近藤芳正、役所の検閲官役は西村雅彦。役者の差は仕方ないが、内容の違いがまた、演劇のが良かった。一つに、迷い込んできたカラスを検閲官が飼っている、というエピソードがある。検閲官の優しさを演出するには非常に良いエピソードだ。笑い要素もある。そして、こちらはラストにもう一オチある。映画版の演出では白けてしまったラストシーンが、演劇では泣けてしまったことに十分満足できたのだが、最後にもう一つオマケがあるのだから、さすがの上手さにうなってしまう。何で変えちゃったんだろう。比較すれば、映画版は演出もひどいしな。

もともとこの「笑の大学」はラジオドラマだったそうだ。その時のキャスティングは、作家が三宅裕司、検閲官が坂東八十助。こっちもなかなか良さそうだ。ラジオ、芝居、映画と、一番情報量の多い映画で失敗してるってのは面白いもんだな。それならそれで、いっそベタベタながら、作家のモデルとなった菊谷栄が召集されて戦地で死んだエピソードを映画の方には盛り込んで欲しかったなぁ。それなら、映画も泣けたかも。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)もがみがわ NAO[*] 煽尼采[*] 林田乃丞[*] CRIMSON

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。