ドラマ部分もしっかり重視で、M（ジュディ・デンチ）をキリキリさせながらの信頼関係、ヴェスパー（エヴァ・グリーン）との絆もよく描けていました。

原作はシリーズの第一話にあたるそうで、ここ最近の作品とは雰囲気が一変。私は００７の映画は前ボンドのピアース・ブロスナンしか見ておらず、軽めの娯楽アクション映画くらいにしか思ってなかったのですが…ブロスナンの飄々とした味わいも悪くなかったですが、この「ジェームズ・ボンドが誕生するまで」の物語は作り手の意気込み、格が段違いと言う印象を受けました。ラストの締め方も唸った。

意表を突かれたのは…１．アフリカ某国での、テロの資金源につながる爆弾犯を追う場面。逃げる側の走りが半端でなく、アスリート並みに強靭でバネがあり、思わず見惚れた。おかげで見ごたえのある追跡劇でした。

…２．カジノに乗り込む前の、夜会服を前にボンドとヴェスパーが会話する場面。「目で測ったのよ」の一言にﾔﾗﾚﾀ、のボンドの表情が唯一、微笑ましいというか。ユーモアが感じられました。

新ボンドのダニエル・クレイグは、無茶を承知の大胆さ、かつスマートで冷笑的、それが本気の恋に落ちていく面白さもあって、肉体美も麗しく、ボンドの名にふさわしかったと思えます。金髪で青い目だから不評を買ったという話はナンセンス過ぎ。