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[コメント] 浮き雲(1996/フィンランド)

徹底した直接描写の排除は笑っちゃうほどツボ。涙が出るほどツボ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストシーン。空を見上げる主人公達。 おそらくこの映画で唯一、主人公達が顔を上げるシーン。 おそらく唯一、カメラが上から見下ろすシーン。このワンショットに込められた希望の光。 間違いなくハッピーエンドなのだが、ノーテンキに喜ぶような真似はしない。

すっかり「不幸」がクセになってしまったせいか、むしろ戸惑っているようにさえ見える表情。 そして、普通そこにあるべきはずの「見上げた先」つまり「空」を写したショットがない。 おそらく他の監督にこのシーンを撮らせたら、ほとんどの人は「空に浮かぶ雲」で映画を締めくくるだろう(なにしろ『浮き雲』なんだから)。 だがそれではいけないのだ。それではノーテンキなハッピーエンドになってしまう。 監督は意図的にそれを避けている。希望の光は見えても、それは結末ではない。

小津を目指した監督は大勢いたが(そして成功した作品も多数あるが)、小津の「進化系」を見せてくれるのはカウリスマキしかない。

(評価:★5)

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