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[コメント] ディア・ハンター(1978/米)

史実という観点では不正解かもしれないけど、一国の歴史を的確に表現した映画。三十数年ぶりに観て泣きっぱなしで疲れた。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実に30数年ぶりに2番館に落ちた制作40周年記念4Kデジタル修復版を2K上映にて鑑賞。ややこしい。

最初に観たのは大学生の頃。その時は『天国の門』も含めて既に“伝説”でしたね。 捕虜ロシアンルーレット場面のパロディーで、カラシたっぷりのホットドックを無理矢理食わせるシーンを見たことあるけど、あれは何だったろう?自主映画だったかな?

この映画、無駄に長いんですよ。特に前半の結婚パーティーのクダリ。クソ長い。そう思っていた昔。

今観たら、好きすぎてクソ長いパーティーシーンで号泣してた。いやもっと全然前、メリル・ストリープが登場した辺りで泣いてた。早っ。 ちなみにこの映画当時メリル・ストリープは無名だったそうですよ(既にアラサー!)。いや無名どころか、出演映画は一つもなし(出演作はあったけど未公開)。舞台を見たデ・ニーロがこの役に推挙したそうです。ウィキペディア情報。

ああ、あとジョン・カザールね。『ゴッドファーザー』シリーズでダメ兄貴、『狼たちの午後』でダメ男、この『ディア・ハンター』でもダメ男。どんだけダメ男なんだって話ですが、これらと『カンバセーション…盗聴…』の5本だけが映画出演作で、本作の公開前に癌で死去。出演作全部がアカデミー作品賞にノミネートされる傑作で、しかもこの当時メリル・ストリープと婚約してたんだってよ。あんた全然ダメ男じゃないよ。ウィキペディア情報。

さて、本題。

どうやら、元々「ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット」アイディアありきの企画で、「ベトナム戦争」は後付けだったらしい。ダーティペア。 そのせいかどうか、「史実的にはどうなの?」と思われる箇所もあると思います。ベトコンの扱いどうなの?とかね。 ただ、それが意図的なものかというと少々疑問があって、我々が後年に目にしているから思う所もあると思うんです。

ベトナム戦争終結が1975年。この映画が1978年公開。コッポラが本当にナパームで森を燃やした『地獄の黙示録』が1979年公開。おそらくこの2作がベトナム戦争をテーマにしたアメリカ映画の草分けだったと思うのです。『プラトーン』『グッドモーニング, ベトナム』など、アメリカ自身が“あの戦争”にきちんと向き合えるようになったのは戦後10年近く経ってから。 つまりこの時期の草分け作品である本作は、ベトナム戦争そのものよりも「アメリカン・ニューシネマ」の影響下にあるように思うのです。

確かに長いんだよ、ベトナム戦争に行く前のシーンが。 でも逆に、そこに意図がある「アメリカン・ニューシネマ」と考えたらどうだろう?

鉄鋼の街ピッツバーグ(の郊外)に流れる平和で幸せな時間。古き良きアメリカの姿。 そして訪れる、ベトナム戦争とその後の世界。

それはまるで、ベトナム戦争を境に、古き良き時代が失われていくアメリカの姿と重なります。

もしかするとこの映画は、『地獄の黙示録』同様、アメリカという国を客観視しようとした作品なのかもしれません。 それも、後の『天国の門』という(アメリカの汚点を描こうとした)“伝説”を知ってるから、そう思うだけなのかもしれませんけどね。

余談

今回初めて気付いたんだけど、クリストファー・ウォーケンのフルネームもそうだし、結婚式の教会はロシア正教だと思うんですよ。なぜロシア系移民の設定なんだろう?と思いながら観てたんですね。ピッツバーグってそういう土地柄なのだろうか?とかね。 結局その真相は分からないのですが、『天国の門』ってロシア系移民がアメリカという国の犠牲になる話なんですよね。穿った見方ですが、そこに繋がる設定なのかもしれません。

(19.04.21 ユジク阿佐ヶ谷にて鑑賞)

(評価:★5)

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