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[コメント] バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014/米)

例えるなら、村上春樹の小説を藤岡弘が舞台化するって話だろ?え?違う?
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いやまあ、レイモンド・カーヴァーが村上春樹に相当するかどうかは知らないけどね。ただ、カーヴァーの小説は春樹が翻訳してるんだ。劇中劇は「愛について語るときに我々の語ること」だけど、村上春樹自身も「走ることについて語るときに僕の語ること」ってエッセイを書いてるしね。

そういう訳で読んでみたわけですよ。春樹訳の「愛について語るときに我々の語ること」。正直、何だか分からない短編小説なんですが。 この映画では、この小説を舞台化したという劇中劇ではなく、現実世界の中で、小説のエピソード、それも直接描写ではない間接的なエピソードを、巧みに盛り込んでいるのです。非常に高度な脚本です。 それで気付いたんですが、小説は4人の会話劇で、噂話にだけ登場する第5の人物がいるんです。その5人目の人物こそ、この映画のマイケル・キートンであるように思えてくるのです(実際舞台のラストシーンはそうなんだと思う)。

最初私は、この映画『鬼火』なんじゃないかと思ったのです。いや、望月六郎じゃなくて、ルイ・マルの。手法はヒッチコック『ロープ』なんだけどさ。 だけど、ふと気付いたのです。イニャリトゥはいつも「喪失と再生の物語」を描いているのではないか?ということに。 そう考えると、この映画も、今までのイニャリトゥ作品も、グッと分かりやすくなってくる。いやまあ、基本、この人の映画は難しいんだけどさ。そして何だかよく分からないカーヴァーの小説も、この映画を観ると何か掴めるような気がしてくるのです。まあ、気がするだけだけど。よく出来た映画だな。

ところでこれ、米アカデミーにとってはウヒウヒ映画だったのかなぁ?俺はハリウッド的ヒーローを馬鹿にしたウヒウヒ映画に思えたんだけど。なんだ、やっぱりウヒウヒ映画なんだ。

余談

そういや、この映画、米アカデミー監督賞獲ってるんだけど、前年は『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンじゃなかった?連続メキシコ人監督が受賞してるんだねえ。勢いあるねえ。

(15.05.17 TOHOシネマズシャンテにて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ロープブレーク[*] もがみがわ

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