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[コメント] マル本 噂のストリッパー(1982/日)

俺的「夏休みの終わり」映画の最高峰
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画としての完成度は決して高くないかもしれないが、いや、ぶっちゃけ低いのだが、この脚本にはグッとくるものがある。まあ、たぶん、俺だけだろうが。

恋愛の最終目標の一つが“肉体関係”であるにもかかわらず(実際多くのポルノは、最後は本当に愛する人と結ばれるという終わり方をする)、この映画は、肉体関係を結んだことで“恋”を失うという構成になっている。

喪失感と共に若者が大人の階段を登る瞬間を捉えた、大変切ない話だ。

一方、女の側にも成長がある。 彼女は、街で「住む世界の違う人種」と出会ってしまう。 そこで彼女が何を感じたかは描写されないが、直後に生板ショー出演を決意することから、自分の住む世界を明確に意識したのだと推測される。 いや、正確には“決意”とは言ってはいない。「アルバイト感覚で」と言うのだ。ここが凄い。

自分の住む世界を自覚してプロの道に進むことを意識しつつ、抜け出せない世界にどっぷり浸りはじめていることに薄々気付きつつ、それを自分自身で認めたくない発言が「アルバイト感覚」なのだ。 と同時に、“肉体関係”を「アルバイト感覚」で結ぶと言っているのだ。 つまり、そこには“愛情”はない。男はそれに気付いてしまうのだ。

男は男で、初対面の女の子とヤッちゃったりするのだが、これにも重大な意味がある。 血肉の通った生身の女性を知ることで、愛情のないSEXが分かってしまうのだ。 これが童貞のままのケーキ屋ケンちゃんだったら勘違いしてドハマリしただろう。 逆に女性を知り尽くした洗濯屋ケンちゃんだったら最初から恋なんて芽生えない。

夏休みの終わりに似た喪失感。 この映画は、時代の空気と、青年の成長を描いている。

(10.09.04 ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

(評価:★5)

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