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[コメント] その土曜日、7時58分(2007/米=英)

仲のいい兄弟だこと
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







強盗ってのは、コントの設定にもよく用いられるように、実は話が作り易い。 要するに、犯罪というのは設定し易い「非日常」であり、中でも強盗は殺人に次ぐ人気の(?)設定とも言えるのです。 だからと言って、この設定を否定する気は全然ない。むしろ好き。 狙う店などはユニークで面白い。この手の時間軸の交差も好き。

でも、全体的にどうも重すぎる気がする。 正確には、犯罪の軽さと描きたい物の重さが釣り合ってない気がする。

「まず事件ありき」の構成とこのショボイ犯罪は(結果が重大になっただけだ)、「人間はおかしくてかなしい」というポイントに主眼を置いたコーエン兄弟みたいなクライムコメディーが似合っていたような気がする。

一方、最終的に描きたかったと思われる「家族の物語」※といった重いテーマなら、それは『砂の器』であるべきだったと思うのですよ。 それは、時間軸の操作もさることながら、“視点”の問題じゃないかとも思うのです。

(※描きたかった“と思われる”と書いたのは、思い返すと本当に描けているかどうかすら怪しい感じがしたから。原題がなかったら、父親の行動も解釈に苦しんだような気がしている。)

もちろん「徹底した刑事視点で!」と言ってるわけではない(そういう手もあったろうし、その方がテーマが明確だったかもしれないけど)。 ほら、最後父親視点になるでしょ。 父親視点が、もっと早い段階で一度あっても良かったと思う。 どうせ時間軸を操作して「神視点」で観客に見せるなら、例えば「父親が何か気付いているかもしれない」ともっと早い段階で観客に想起させると、もっと悲しい物語足り得たんじゃないかと思うんです。例えば、ね。

こうした、どっちつかず加減(重さと軽さが釣り合ってない)のは、ある意味シドニー・ルメットらしいと言えば、らしい気もしてきた。

(09.05.22 飯田橋ギンレイにて鑑賞)

(評価:★3)

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