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[コメント] この自由な世界で(2007/英=独=伊=スペイン=ポーランド)

ケン・ローチの視点は、冷静さを失った者を冷静に見つめている気がする。
ペペロンチーノ

最近のケン・ローチのすごい所は、すごいと思わせないところがすごいと思うんです。自分で書いてて「それは要約すると、すごくないんじゃねえの?」という気もしてきたのですが、すごいんです。

当然、上っ面のきれいごとは描きません。ですが、えぐりとって「どや!どや!」ということもない。 淡々と静かに出来事を並べていく。 ベネチア映画祭では最優秀脚本賞をとったそうですが、ポール・ラヴァティによる脚本は実に効果的に出来事を並べていく。

この「写実主義」ともいえる手法で、ケン・ローチはきちんとケン・ローチの視点で出来事を切り取っていきます。 この物語の中で、権力側の人間が一切登場しない。市井の人々の視点を貫き通す。 誰の味方もしないし、誰も一方的な悪人にしない。 ケン・ローチは、誰を憐れむでなく、それでいて全ての人を憐れんでいるように思えるのです。

It's A Free World...

この自由な世界で、人が人として生きていくことがどれだけ不自由か。 それをケン・ローチは冷静に静かに見つめている、そんな映画。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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