コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] この自由な世界で(2007/英=独=伊=スペイン=ポーランド)

本作は現実であり可愛らしいディストピアSFではなく容赦なく観客をペシャンコにする。現代映画のひとつの典型であり、ジャームッシュもカウリスマキもダルデンヌ兄弟も、撮り続けているのは本作の応用編なんだろうと感じさせられるど真ん中。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ひとつの歯車に呑み込まれて「わたしだって子育てがある」とアイヒマンみたいな科白を吐く。キリストを知らないと云ったペテロのように。息子が学校で起こした暴力事件の原因は「ママの悪口を云う」からだった。事態は重層化されていて身動きが取れない。「経済」は弱者の首根っこを押さえて離さない。

ファッキン連発がすごい。ファッキン・スカンバックは「ひどいじゃない」と字幕になっていた。本作で肯定的なスタンスは、(トレーラーハウスにいる)不法難民を当局に通報するのは悪だ、と端的に云い切っていることからもたらされている。それは勿論、関わり合いになるなというのとは正反対のスタンスからだった。

ラストのウクライナの女性、アンジー紹介所(&ローズのとれた)の虹のロゴを見て「幸せを運んでくれる」と云う。アンジー、キルストン・ウェアリングはこれに応答せねばならない。他者と相対するとは毎回が真剣勝負なのだ。素晴らしい作品と思う。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。