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[コメント] ふたりの5つの分かれ路(2004/仏)

劇的な要素を排して表情だけで全てを物語るオゾン版『いつも2人で』。この手の話は作り手が面白がってるほど観ている側は面白くない。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画は「愛が引き裂かれる物語」ではない。「愛が冷めていく物語」だ。 それも浮気や不倫といった、明確な“事件”が原因ではない。一見ごく当たり前の日常から生じ始める微妙なズレ。この映画が描こうとするものはそれだ。 最初に結末を見せ、離婚契約の朗読を聞くドアップで「ここを見てくれ!この表情を見てくれ!」と宣言する。

劇的な要素を極力排し、“表情”や“視線”といった微細な描写からその感情を浮かび上がらせようとする巧みな演出。『5x2』というミステリアスな原題からも伺えるオゾンのミステリー趣味。 ベッソンが持ち込んだハリウッド要素がフランス映画界を席巻している今、トリュフォー『隣の女』的フランス映画らしいフランス映画を撮れる最後の一人=フランソワ・オゾン。 その類稀なる技量を持って初めて成立するこの“地味な”物語の制作は、彼にとって楽しい作業だったに違いない。

私事で恐縮だが、ずいぶん昔、友人の依頼で自主制作映画用に似たような話を似たような構成で書いたことがある。もっともっと稚拙な話で引き合いに出すのもおこがましいのだが、それでも書き手としては非常に面白かったのである。些細な物語を書くってのは、人間観察にも似た興味深さがある(人によるのかもしれないが)。その探究心をくすぐる面白さがオゾンにあったことは、「別れの原因を探る」ミステリーにも似た構成にも現れているのだろう。

で、結果、私の書いた脚本を読んだ監督の一言。「だから何?」

そうなのだ。 思い返せば『いつも2人で』も、この映画も、「あんなに愛し合ったのに」系映画の多くはそこに帰結する。「だから何?」。

そうだよなあ、「冷めていく物語」なんて、観てて面白かぁねえもんなあ。

(評価:★3)

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