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[コメント] 夜逃げ屋本舗(1992/日)

東宝明朗喜劇の伝統に忠実に「自己破産みんなですればこわくない」と軽いノリで語られたバブル崩壊。谷啓のヤクザはあんまり面白くないが、東宝創立60周年だからこれでいいのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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自己破産戦法を前に「借りたら返すのが当たり前」と苛立つ信販会社の大竹しのぶに対し、「貸さない優しさはないのか」と夜逃げ屋の中村雅俊は斬り込む。カードローンは認められた「商行為よ」と返す大竹に無理矢理感が滲み出る。「彼等はただ逃げているんじゃない、立ち直るために一からやり直しているんだ」。記憶しておきたい正論だった。

蛭子能収の倒産電気屋と西村知美の不思議ちゃん夫婦がシリアスで興味深い。カードで何でも買える世の中について、西村は夫の菊池健一郎に「貴方に信用があるからよ。誰も知らない東京に出てきて誰かに信用されるって、勇気が湧いて来るわよね」と彼女一流の前向き感で語るのが寂しかった。金でしか繋がれない人間関係の究極がここにあるのだろう。

タイトルには見当たらなかったが、Wikiには宇都宮健児弁護士が協力とある。製作はコメディが多い光和で、自主企画は立派。フュージョン系列のハーマンミュートの劇伴とか、エンドタイトルのKANの主題歌とか、音楽だけがバブル時代を引き摺っているチグハグ感がリアルタイムというやつなんだろう。夜逃げ代金は四人家族25万円、トラック代は別だった。

(評価:★4)

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