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[コメント] 地球防衛軍(1957/日)

宇宙人に結婚迫られる奇譚は沼の大蛇に生娘差し出す妖怪退治系列。私的ベストショットは白川由美の入浴覗きにくるロボット怪獣モゲラ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、河内桃子との盆踊りを避けて逃げ去る平田昭彦。男性機能の障害かと思いきや宇宙人の専属になる。唐突にテレビ画面に登場、このとき画面がピンク色しているのが意味深と思われる。「ボクと話したかったらいつでもテレビのスイッチを入れて」と狂ったようなことを口走る。

盆踊りから始まる本作、『ゴジラ』もナルセっぽい漁村の光景から始まっていたが、70年代以降に怪獣映画観始めた我々は、この昔の光景とのミスマッチが新鮮。消防の放水で抵抗するのがまた侘しい。デモ隊排除じゃあるまいし。しかし以降は自衛隊の兵器の(本物かどうか知らんが)デモンストレーションのようで、橋梁爆破とともにロボットも砕けているのが珍しい。まだ序盤なのに人間が勝っちゃってもいいのだろうか。

宇宙人はいま火星に住んでいて、地球人は火星の土地を勝手に売り買いしていると訴えているのは何なのだろう。宇宙人の要求は宇宙船の着陸した半径3キロの居留。志村喬の科学者は科学者なのにまるで防衛評論家のようで火星から地球に大挙移住する計画に違いない、庇を貸したら母屋を取られるぜと世界に発信する。約束破って攻撃開始の号令かける司令がいつもの藤田進という配役が東宝の開き直りを想わせる。彼が国連の協力で戦う出世の図は東宝の願望だろうか。予告通り水爆使われたらどうするのだろう。宇宙人は地球を水爆の破壊から救いに来たのだと平田はピンク色のテレビで語るのだが国連の面々も無視して攻撃計画に邁進。

要求はもうひとつ、彼等の結婚では子供が増えないので地球人との結婚認可、「さしあたってこの五人の女性をよこしてください。すでに三人は手に入れました」と河内と白川らの写真を見せる。この話法はいかにも怪しい。ロボット怪獣 モゲラ登場時に白川由美は風呂に入っていて、風呂場の小さな窓から怪獣を見る、という風情あるショット。引率者へのお色気作戦は嬉しい。

宇宙人は後半、半径120キロの占拠を通告。富士山麓から東京が呑みこまれるため、民衆は疎開を、また戦争だねってな手慣れた感じで始めている。何だ結局悪者かよと話が単純になってしまってあとは退屈。平田の云うように宇宙人が平和の使者で、河内桃子が悦んで嫁ぐなんて展開のほうが面白かったに決まっている。本作では白川、河内は誘拐されて宇宙船。あとは平田が何するのかだけが終盤の興味となるが、俺は騙されていたんだと女たち救って水爆阻止という便利な役回りになる。こうしないと宇宙人が勝っちゃうものね。

ガッチャマンみたいなヘルメットかぶっただけの宇宙人は手抜きだが、人間と同じ格好だからセックスできるのだろうという説得性がある。新兵器の団子の串刺しみたいなロケットも間抜け。意味もなく三段階ロケットでパラボラアンテナが飛び出るのも間抜けだ(別に間抜けでもいいのだが)。炎とか洪水を二重撮影はいまのCGと同じで迫力に欠ける。

宇宙人はかつて水爆で星を失っている。ラスト、地球征服に失敗して逃走する宇宙人を見て志村の博士は、彼等は宇宙の放浪者、同じ轍を踏んではいけないと原水爆に警笛を鳴らすのだが、比較で喋るのは可哀想だと思った。黒縁眼鏡の村上冬樹の博士のもっともらしい顔が印象に残った。同時上映は『サザエさんの青春』。東宝お勧めの週末の過ごし方の提案なんだろう。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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