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[コメント] 夜明けのうた(1965/日)

冴えまくる蔵原の斬新な浅丘ルリ子版『月曜日のユカ』。難病もののサイドストーリーとの折り合いがイマイチで残念。これを昇華した先に翌年の傑作『愛と死の記録』があったのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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写真のコラージュから始め、浅丘の部屋などでときどき反復される。セミドキュメンタリー風の長回し。買ったばかりのオープンカーに落書きされ、出て行ったオトコに宝石持っていかれ、浴衣のままバスタブに入る。自分のこと書いてある新作断って自動車事故起こして星型の絆創膏。パーティで踊って傷口から血が流れている。代々木体育館が窓から見えるマンション。

タイトル曲をツーコーラス唄う岸洋子の舞台は浅丘のブー垂れる建前演技にはめ込まれる(名曲の記録としては不本意だろう)。終盤、部屋に帰ってきて自宅の扉開ける浅丘を、屋外の暗がりからパンアップして捉えるショットがすごい。ヌーヴェルヴァーグの日活流換骨奪胎、本作でも蔵原は飛ぶ鳥落とす勢いで冴えまくっている。

しかし、これらと浜田松原の難病ものとの兼ね合いは、悪くないが微妙でもうひとつ突き抜けなかった。しかし浅丘のオープンカー、松原がサングラスを外すと太陽の日がさっと差し込むショットが素晴らしい。視神経孤立結核、半年後には失明する松原。治らないとの診断で散財するカップルはしかし盲学校を見学に行ったとも語る。別に悪意なく「メクラ」と云い続ける浜田が時代。全部音声入れ直してほしい。

三人で深夜のボーリング場、松原が持ち歩いている眼を洗浄する筒状の器具は見たことがある。あれは今でも使うのだろうか。グラスの底から店のなか眺めまわす浅丘。予告編では夜と夜明けについて浜田と松原がこんこんと語り合う件があった。本編ではサックリ切られているのだが、ここは残したほうが良かったように思う。

「読みもせずにホンをけなすな」と真面目に浅丘を批難する小松方正が意外にも真面目な造形なのが意外性があり好印象。最後の夜明けに浅丘は彼のホンを読んで涙を流し、カップルは笑いながら電車で帰省する。浅丘がキャメラ目線で叫んだあと暗転し、タイトル曲がワンコーラス流れる。格好いいラスト。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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