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[コメント] 第50回全国高校野球選手権大会 青春(1968/日)

私が子供の頃は高校野球はプロ野球より人気があり、プロスポーツは小バカにする風潮があったものだ。「青春」なんて如何わしいタイトルがその後の凋落を予感させてもいるとも思うが。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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冒頭は皇太子付の開会式。解説付きでテレビと変わらない。6万の観客で客席満員。沖縄は興南高校。「青春の歴史が受け継がれていく」みたいな紋切型(タイトルもそうだ)がすでに蔓延していたらしい。

各地の練習風景が活写される。グラウンドの雪かきから始まる北国の練習。廊下を活用、級友が歩いている横でタイヤをバットで叩いている。都会の狭いグラウンドでは各部併用、外野はサッカー選手の揉み合いの中で困っている。九州ではボタ山昇るランニング(この炭鉱の佇まいがよく撮れている)。

歴史。ここが個人的には最大の見処だった。大正4年の第一回は出場校10。第3回はフィルムが残されていて映される(スピードは違っている)。やたら応援席が盛り上がっているのが面白い。第4回は米騒動で中止。第10回から甲子園球場。中之島公園に速報版が儲けられ黒山の人だかり。延長25回で有名な中京明石のフィルムがあるのに驚いた。ラジオの実況が加えられている。ボードにレーンが加えられ横に延ばされる様子まで記録されている。客席は超満員。当時の甲子園の銀屋根はとても広い。

現代の国旗掲揚に戦争のフィルムを繋げるのは意図なのだろう。昭和16年の予選途中で中止。18年、大鉄傘供出。崩れ落ちるショットがあるがイメージショットかも知れない。上記明石中の投手はルソン島で戦死と伝えられる。昭和21年再開。

部員200人の練習、補欠同じユニフォーム着て周りを取り巻いて声出している。女子マネージャーは最近増えたと云われている。救急箱傍らに選手の怪我の治療して、部室で針仕事したりボール磨きしたりしている。球場には入れない、と云われている。ラバウルで右手首失った監督のノック。

予選。沖縄では米軍の観戦があり、グラウンド上を米機が飛ぶ。東京は156校参加。大雨泥沼のなかでの試合。44対零のコールド試合。どれだけフィルム回したのだろう。本戦抽選の様子。優勝旗の紹介。ラテン語で勝者に栄光あれと縫い取り。この旗は何の主張もしない、とナレはいいことを云う。

大会会長(本作の製作総指揮の人だろう)は私も出場したと挨拶。放たれた鳩がうろついている。優勝旗返還。皇太子、文部大臣、協会、審判委員長挨拶と退屈な光景。宣誓は定型。定型のほうがずっといいと思う。発言を自由にして、紋切型の並ぶ詰まらない青年の主張大会になって、高校野球は詰まらなくなった。

後半は決勝戦ほか幾つかの試合が活写。優勝パレードでエンドタイトル。劇伴は派手過ぎたかも知れない。企画朝日新聞社。明治百年記念芸術祭参加作品らしい。最後に総監督市川崑と並べて協力谷川俊太郎とある。ラストショットが祝賀パレード見ている普通の高校生たちというのがいい。

(評価:★3)

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