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[コメント] サバイバルファミリー(2017/日)

観ているうちは面白いが、どこも想定内で記憶に残る場面がなかった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







テレビの「もしも」シリーズでよくあるネタだが、この切り口はどう撮っても大抵面白い。しかし本作は、この設定で金かけてCG駆使してこの監督でこの俳優なら当然面白かろう、という期待値のキリギリクリア、という感想。観ているうちは面白いが、観終わるとすぐに記憶の剥離が始まっている。

最初は不平たれて、途中はギャグで、どんどんシリアスになり、最後は気持ちよく締める、という想定内な進行で、それでもそれぞれのパーツが充実していたら構わないのだが、足りないのはもっぱらギャグだろう。なんで赤飯食うんだ、とか、行くにつれてどんどん値上がりするペットボトル、とかいう面白いネタが続かない。渡辺えりはどってことないし、時任三郎一家はある意味相当な馬鹿だがネタに出来ていないし、お父さんを一家で指弾しても可哀そうなだけだし、豚を追いかけても画になっていないし。この点、極上に巧かった『スゥイング・ガールズ』と比べれば数段落ちる。

面白いのは単純に、車が通らず人ばかりが歩く道路の描写の数々。急流や野犬の件はよく撮れていて好調。絶体絶命の窮地からの救済という、これもお決まりの処でのSL登場は洒落ていてよかった。どうやって電気なしにSLを線路まで運んだのか、など釈然としないが、そんなことはどうでもいいのだろう。

ラストは鹿児島に留まるかと思いきやさっさと帰京する。このテーマならあのまま帰らず地に足の着いた生活を続けるという選択肢があったはずだが、この辺り中庸の得と云うか、微温的と云うか。ただ、最後に流れるHard Timesはおかしい。ディランも歌ったので知っているが、農園の不作で農業者が酷い目に合った歌であり、本作のような家族の絆再確認、みたいな肯定的なニュアンスは全然ない。作品にそぐわない選択で、実に蛇足だった。

あと、息子の片想いの恋人の件は何の前振りだったのだろう。一瞬写真が映る大地康雄の子供たちがそうだったんですか。よく判らなかった。

(評価:★3)

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